今の池江璃花子には「メダルが必要」 コーチが語る、女子高生スイマー成長の鍵
「14」の日本記録を持つ池江璃花子を指導する村上二美也コーチ 【スポーツナビ】
日本の女子競泳界をけん引する池江だが、素顔は17歳の女子高生。その池江を中学1年から指導し、トビウオジャパン(競泳日本代表)のコーチも務める村上二美也コーチは「環境と体に変化がある難しい時期」と表現する。
大人の階段を上る期待のスイマーにとって、今年の世界水泳はどのような位置付けとなるのか。現在のコンディションや課題など、コーチの視点から展望を語ってもらった。(取材:6月23日)
中学1年の池江は「まだ細身で、体が小さい子」
まだ細身で、体が小さい子でした。練習量も少なかったようですし、長い距離をまだ泳げないのが課題でした。ただ小学校の時に短い距離では優勝してきていましたので、スピードは持っている子なんだろうなという印象でした。
50メートルは五輪だと個人のフリー(自由形)しか(実施種目が)ないので、しっかり100メートルや200メートルも泳げるようにならなければいけないなということで取り組んでいました。
――今でこそたくさんの記録を持っている池江選手ですが、あらためて村上コーチから見て池江選手の何が優れているのでしょうか?
水泳は水をかいて進むスポーツですから、いかに早く水をつかんで前に進むかということが重要です。水を捉える感覚と水を捉える形、手が水に入ってから水中でハイエルボー(肘を立てて手のひらから肘までを一直線にして水をかく腕の状態)になる形に才能があると思います。
水泳のコーチというのはそういう部分を最初に教えるのですが、10人にいたら10人がぱっとできるわけではありません。ただ池江は最初に見た時からそれができていました。前にいたクラブのコーチの皆さんに教えていただいたこともあるとは思いますが、ある程度完成しているような状況でしたね。
高まる周囲の期待、変わる環境
確かに最近は日本記録を皆さんに期待してもらっていますが、(記録が)止まり始めています。日本選手権、ジャパンオープン、欧州グランプリとここ3大会そういう記録が出ていませんが、それに近いタイムが出ている状況です。
一般的に日本記録というのはそう簡単に出るものではないのですが、こと最近の池江に関しては泳ぐたびに出してきたので皆さんも期待をしているのだと思います。ここにきて本人も記録が出なくて悔しがっていますが、その原因としては、体が少し変わり始めているというのがあると思います。例えば、パワーをつけるためにウエートトレーニングを入れて筋量が多くなっているとかですね。また、(これから)記録に対してのより一層のトレー二ングが必要です。
あと今までは先輩を追い越せということで、一生懸命に無我夢中でやってきました。その先輩たちが引退して、自分がトップになって、池江自身がどのような取り組みをすべきかがまだ定まっていないことや、トレーニング以外で池江に携わる人たちが非常に多くなった。一個に集中していればよかったものが、今は集中できていないという状況もあります。
例えばスケジュールでいうと、練習が続くので体と心を休めなければならない。でも彼女のスケジュールだと、取材や撮影、イベントなどいろいろなことがあってまったく休めない。そうなると心も体も休めない。となると、疲れが出てきて精神的にも疲労がたまったりということで、なかなか記録が出ないということにもつながってくるのではないかなと思っています。
ただ当然これも、あの子がまた強くなっていく段階だとは思います。そこもしっかりこなしながら、またうまくなってくれればいいのかなと思っています。