ダルビッシュ、圧巻だった5回の投球 6敗目を喫するも不安を払拭

丹羽政善

追い込まれてから本領発揮

インディアンス戦に先発したダルビッシュは6回3失点で6敗目を喫したが、随所にらしさを発揮した 【写真は共同】

 6月28日(現地時間)、ダルビッシュはインディアンス戦に先発し、6回7安打3失点で6敗目を喫したが、三度(みたび)1番からの打順となった5回のピッチングが圧巻だった。

 初回と3回は不運もあったものの、いずれも1番のジェーソン・キプニスを塁に出してから失点したダルビッシュ。5回も先頭のキプニスに二塁打を許すと、それまでと同じ展開となった。

 その回の表、レンジャーズは1点を返して1対3。ようやく流れを引き寄せつつあるなかで失点すれば、試合が決まりかねない。 

 だが、追い込まれてダルビッシュが、らしさをみせた。

「あそこは、初回は仕方がない(失策絡み)として、5回は、あれ以上点を取られると(逆転するのは)無理なので、意地でも抑えてやろうと」

 まず、それまで2安打だったフランシスコ・リンドアをレフトフライに仕留めると、続く3番のマイケル・ブラントリーと4番のエドウィン・エンカーナシオンを連続三振に切って取った。結果としては序盤のビハインドを跳ね返せずチームは敗れてしまうのだが、この試合の間違いなくポイントだった。

 なおダルビッシュはこのとき、手応えも同時に得ている。

「エンカーナシオンから三振をとった2シームは、思いっきり投げた」

 実は、ヤンキースの田中将大と投げ合った前回23日の登板で、右上腕三頭筋に張りを感じ、88球で降板した。上腕三頭筋というのは実は、ダルビッシュが15年3月にトミー・ジョン手術を受ける前に違和感を覚えた箇所でもあり、この日の登板前、「その意味で怖かった」そうだが、腕を振って恐怖心も振り払った。

「前回(の登板後)は大丈夫かな、気持ち悪いなと。(きょうの)5、6回に関してはそういうのがなかった」

シンカーに手応え「良い感覚」

 ところで、エンカーナシオンから三振を奪ったシンカーのキレは抜群だった。

 レンジャーズのジェフ・バニスター監督も、「今日のシンカーは良かった」と話したが、本人もシンカーに手応えを感じており、「ヒューストンで投げたとき(6月12日)ぐらいから、良い感覚で投げられている」そうだ。

 ちなみに、この日の数値はまだ出ていないが、12日のシンカーの曲がる数値は、トミー・ジョン手術から復帰以降、最高である。

 ボールの軌道解析ができる『STATCAST』では、同じ球速、同じリリースポイント、同じリリースアングルで投じられた無回転のボールがベースの上を通過する地点を基準として、実際の回転のかかったボールがどこを通過したか、その差を計測できる。

 右投手の場合、マイナスの値が大きければ大きいほど、右打者に食い込むような軌道となり、曲がりすぎると制球が難しくなるわけだが、12日の数値はマイナス1.36フィート(約42センチ)で、過去最高値だった。前回のヤンキース戦もマイナス1.22フィート(約37センチ)と高い値を示している。このあたりのデータは後日、詳しくまとめるが、いずれにしても鋭い動きにインディアンス打線は手を焼いたのだ。

 試合全体を振り返れば、なかなかタイムリーヒットが出ない今のレンジャーズにとっては3回までの3失点が致命的となったが、敗戦の中でも、ダルビッシュが問題なく投げられたことは、チームにとって大きな収穫となったのではないか。

 ダルビッシュにも安堵(あんど)の表情が、浮かんでいた。
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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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