ダルビッシュ、圧巻だった5回の投球 6敗目を喫するも不安を払拭
追い込まれてから本領発揮
インディアンス戦に先発したダルビッシュは6回3失点で6敗目を喫したが、随所にらしさを発揮した 【写真は共同】
初回と3回は不運もあったものの、いずれも1番のジェーソン・キプニスを塁に出してから失点したダルビッシュ。5回も先頭のキプニスに二塁打を許すと、それまでと同じ展開となった。
その回の表、レンジャーズは1点を返して1対3。ようやく流れを引き寄せつつあるなかで失点すれば、試合が決まりかねない。
だが、追い込まれてダルビッシュが、らしさをみせた。
「あそこは、初回は仕方がない(失策絡み)として、5回は、あれ以上点を取られると(逆転するのは)無理なので、意地でも抑えてやろうと」
まず、それまで2安打だったフランシスコ・リンドアをレフトフライに仕留めると、続く3番のマイケル・ブラントリーと4番のエドウィン・エンカーナシオンを連続三振に切って取った。結果としては序盤のビハインドを跳ね返せずチームは敗れてしまうのだが、この試合の間違いなくポイントだった。
なおダルビッシュはこのとき、手応えも同時に得ている。
「エンカーナシオンから三振をとった2シームは、思いっきり投げた」
実は、ヤンキースの田中将大と投げ合った前回23日の登板で、右上腕三頭筋に張りを感じ、88球で降板した。上腕三頭筋というのは実は、ダルビッシュが15年3月にトミー・ジョン手術を受ける前に違和感を覚えた箇所でもあり、この日の登板前、「その意味で怖かった」そうだが、腕を振って恐怖心も振り払った。
「前回(の登板後)は大丈夫かな、気持ち悪いなと。(きょうの)5、6回に関してはそういうのがなかった」
シンカーに手応え「良い感覚」
レンジャーズのジェフ・バニスター監督も、「今日のシンカーは良かった」と話したが、本人もシンカーに手応えを感じており、「ヒューストンで投げたとき(6月12日)ぐらいから、良い感覚で投げられている」そうだ。
ちなみに、この日の数値はまだ出ていないが、12日のシンカーの曲がる数値は、トミー・ジョン手術から復帰以降、最高である。
ボールの軌道解析ができる『STATCAST』では、同じ球速、同じリリースポイント、同じリリースアングルで投じられた無回転のボールがベースの上を通過する地点を基準として、実際の回転のかかったボールがどこを通過したか、その差を計測できる。
右投手の場合、マイナスの値が大きければ大きいほど、右打者に食い込むような軌道となり、曲がりすぎると制球が難しくなるわけだが、12日の数値はマイナス1.36フィート(約42センチ)で、過去最高値だった。前回のヤンキース戦もマイナス1.22フィート(約37センチ)と高い値を示している。このあたりのデータは後日、詳しくまとめるが、いずれにしても鋭い動きにインディアンス打線は手を焼いたのだ。
試合全体を振り返れば、なかなかタイムリーヒットが出ない今のレンジャーズにとっては3回までの3失点が致命的となったが、敗戦の中でも、ダルビッシュが問題なく投げられたことは、チームにとって大きな収穫となったのではないか。
ダルビッシュにも安堵(あんど)の表情が、浮かんでいた。
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