竜逆襲のキーパーソン 中日・又吉の進化と今後の可能性

ベースボール・タイムズ

森監督が望むのはリリーフ復活か!?

又吉の起用法が中日の浮沈を左右しそうだ 【写真は共同】

「先発で15個のアウトを取るのがどれだけ苦労するのかやってみなさい、と。言葉で伝える方法はこの1、2年の間でやってきた。もうその段階は終わったので、次の行動に移すべき。実際にやらせてみようかなと。浅尾のときはマスコミを通じて『先発をやりたい』と言ってきた。『じゃあ、やらせましょう』ということでやらせたら勝ってしまった。これが続いたら困るんですけど、そうはならないでしょう。理想はリリーフに戻って落ち着くこと」

 森監督が語ったのは、あくまで先発転向の取り組みはリリーフとして再生させるためという趣旨のもの。事実、オープン戦で先発として結果を残していたにも関わらず、開幕直後はリリーフとして3試合に起用した。また、先発は5回5失点で降板した6月13日の北海道日本ハム戦が最後。それ以降はブルペンで待機させ、実際に4試合で救援起用をしている。実際に、森監督は又吉の今後の起用法について「(先発としては)無理。左打者を並べられたら勝てないでしょう。たまには先発をさせるかも分からないけど」とリリーフに重点を置くことを示唆した。

 先発としての成績を見ると厳し過ぎる評価にも思えるが、又吉をローテから外せるのも先発投手の駒がそろってきたことによる。現在3連勝中のバルデスを軸に、2年目の小笠原慎之介やドラフト1位ルーキーの柳裕也が台頭。4年目の鈴木翔太も27日の阪神戦で地元・浜松で7回途中1失点で凱旋勝利を挙げるなどブレイクの兆しを見せ、ジョーダンもチームトップの5勝を挙げている。2軍には吉見一起と大野雄大も控えており、むしろチームとして強化しなければならないのはリリーフ陣なのだ。

上位浮上へ欠かせない存在

 ブルペン強化の必要性。それはリーグ戦再開直後の巨人とのカード3戦目でも露見した。先発の柳が7回2失点と粘りの投球を披露して1点リードのまま8回から継投へ移ったが、8回を岩瀬仁紀と又吉でしのいだ後、続く9回にクローザーの田島慎二が2点を奪われてサヨナラ負けとなった。

 不安定な投球が続いている田島に批判が集中するのは仕方ないが、問題はリリーフ陣の層にもある。岩瀬とともに勝ちパターンの中で好投を続けていた伊藤準規が、交流戦の終盤から調子を落とし気味。27日の阪神戦でも7回に登板し、押し出し四球を許して1点差に迫られた。だが、ここで又吉が自身3試合連続のリリーフ登板。なおも続いた2死満塁の窮地で、福留孝介を空振り三振に仕留めてみせた。

 5月下旬から徐々に巻き返してきた中日だが、72試合を終えた時点で借金5と戦況はまだまだ厳しい。今後、試合終盤の取りこぼしが続くようではチームの上位浮上はかなわない。「勝利の方程式」を構築することは必要不可欠であり、そこで重要になるのが又吉である。リーグ戦再開後は、チーム5試合中4試合にリリーフ登板し、計2回3分の1を1安打無失点。先発転向で取り戻した自信が本物となり、重圧のかかる場面でも高いパフォーマンスが発揮できるのであれば、「クローザー・又吉」という奥の手も繰り出されるかもしれない。それほど今季の又吉は期待を寄せるに値する存在となっている。

 先発か、それともリリーフか――。どちらも器用にこなせるからこそ、采配を振るう森監督の腕の見せどころ。又吉というカードの切り方が、最下位からの逆襲劇、4年ぶりのAクラス入りへのカギとなるのは間違いない。

(高橋健二/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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