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竜逆襲のキーパーソン
中日・又吉の進化と今後の可能性

先発の適性を証明したプロ初完封

6月6日のロッテ戦でプロ初完封勝利を手にした又吉
6月6日のロッテ戦でプロ初完封勝利を手にした又吉【写真は共同】

 今にも涙があふれ出さんばかりの表情でスタンドのファンに頭を下げていた。中日のプロ4年目、又吉克樹――。自身、初めて味わう完投、そして完封勝利の達成感に込み上げるものを隠せなかった。


 2017年6月6日、千葉ロッテを相手に上った今季8度目の先発マウンド。序盤の3イニングを無安打に抑えて危なげない立ち上がりを見せると、4回から6回までの3イニングは安打と四球が重なり走者を背負う投球となったが、「とにかく低めに集められた」と三塁を踏ませず、無失点のまま最終回へ。「ちょっとドタバタした」と1死から角中勝也にセンター前に運ばれ、2死後に鈴木大地にストレートでの四球を許したが、最後は根元俊一をアウトコースに落ちる球でファーストゴロに打ち取った。


 9回を125球、4安打8奪三振。先発として無傷の4勝目は、チームを4位に浮上させ、又吉自身もリーグトップの防御率1.81。チームにとっても今季初完投初完封に、その存在感は際立つものとなった。

先発転向で取り戻した本来の姿

 又吉といえば、入団から昨季までの3年連続で60試合以上の登板をこなしてきた生粋のリリーバーだ。特にルーキーイヤーの14年には9勝1敗24ホールド、防御率2.21の好成績でセットアッパーとして活躍した。しかし2年目の15年は6勝6敗30ホールド、防御率3.36と安定感を欠き、昨季も6勝6敗16ホールド、防御率2.80。決して数字的に悪くはないが、チームの敗戦に直結する“乱調”が目立ち、その責任感から「野球を辞めたほうが楽になるかも」とまで口にした。


 その苦悩の右腕に今季、首脳陣が命じたのが先発への挑戦。その意図を友利結投手コーチが、厳しくも愛情のこもった言葉で明かす。


「どうせ失点するんだよ、アイツは。リリーフで登板すれば5試合に1回は試合を壊す。だったら、どうせ点を取られるならトータルベースボールで考えようと。7イニングを2点以内に抑えるっていうね。そうやってゲームを作ってくれればという考えで先発を試してみたら、適正として“アリ”だと感じた。本人も秋のキャンプから一生懸命取り組んで、投げ込みから走り込みと頑張ったよね」


 リリーフがダメなら先発で――。プロの世界では安易にも思える考えだが、又吉は結果を出した。その要因を友利投手コーチは先発特有の“逃げ”にあるという。


「ひとつは無駄な力が取れたのかなと思いますね。リリーフのときは自分の持っている力を必要以上に出そうとしてコントロールを悪くしていた。でも先発のときは、点を取られても『長いイニングで取り返せばいいや』というある種の“逃げ”がある。リリーフではその逃げ道が無いですから。イニングが後ろにいけばいくほど、誰も助けてくれない立場になる。昨年までの又吉は冷静さをなくしていた。先発だとある程度の失点はオッケーだよと言ってある。それも又吉のピッチングに良い影響となっているのかもしれないね」


 自らもリリーバーとして数多くの修羅場を経験したコーチの指南が、又吉を重圧から解き放ち、再び高いパフォーマンスを発揮させる要因になっているのは間違いない。だが、又吉が発する言葉は、どこか瀬戸際に立たされているような節が見られる。完封勝利を挙げた直後のヒーローインタビューでも、「毎回ラストチャンスだと思っているので、生き残れたかなと思います」、「1回ミスったら終わりだと思っている。次がどうなるのか分からないので、次が大切になる」と悲壮感すら漂わせた。その真意を読み解く上で鍵となるのが、森繁和監督が年始のテレビ出演で話していたある場面。秋季キャンプから先発転向の練習を命じてきた又吉と福谷浩司についての発言だ。

ベースボール・タイムズ
ベースボール・タイムズ

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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