パ・リーグが交流戦で勝ち越した3つの要因 攻撃力の差はどこから来るのか?

中島大輔

交流戦で7本塁打を放った柳田(写真)らの活躍もあり、ソフトバンクが最高勝率チームに輝いた 【写真は共同】

 巨人が泥沼の13連敗にどっぷりとはまり込んでいる交流戦の最中、メットライフドームでの試合前に某スポーツ新聞の巨人担当記者がふとこぼした。

「パ・リーグと比べて、セ・リーグは戦力が全然違います。一目瞭然なのは、中村(剛也)や浅村(栄斗)のように体の大きな選手がいません。だから野球の質が違います。セ・リーグで見れば、広島が抜けていますが……」

 終わってみれば、この記者の“見立て”は正しかった。今季の交流戦ではパ・リーグが56勝51敗1分けで8年連続の勝ち越し。交流戦が始まってからの13年間で12度もセ・リーグを上回っている。これだけの差になれば、「実力のパ」は揺るぎないものと言っていい。

 ちなみに交流戦が始まった2005年以降の日本シリーズの成績を比べても、パ・リーグ勢が9度制し、通算41勝28敗1分けと大きく勝ち越している。

 ちまたでもさまざまな議論が交わされているが、なぜ、両リーグでここまでの差がついてしまったのだろうか。

 筆者の仮説を裏付けるデータが、今季交流戦の総得点と総失点だ。パ・リーグは459点で、セ・リーグは431点。つまり、攻撃力が両リーグの勝敗を大きく分けているように感じる。

 その裏にあるのが、3つの要因だ。

要因1:球場の大きさ

 メジャーリーグでは広くて本塁打の出にくい球場は「ピッチャーズパーク」、本塁打の出やすいスタジアムは「バッターズパーク」と言われる。独断と偏見で言えば、セ・リーグは巨人の東京ドーム、ヤクルトの神宮球場、DeNAの横浜スタジアムがバッターズパークであるのに対し、パ・リーグのそれはヤフオクドームくらいだ。ヤフオクドームはかつて日本一大きい球場だったものの、15年から「ホームランテラス」(ラッキーゾーン)が設置され、左・右中間ともに118メートルから112メートルに縮小されている。

 球場が狭いことの“弊害”について、以前、埼玉西武の栗山巧が面白い話をしていた。

「不思議と東京ドームや北九州(市民球場)でやっているのに、ホームランが出ないことがあるじゃないですか。“行った”と思っても、打球がそれなりに落ちていくでしょ? 結局、目と体で“(フェンスまで)だいたいあの距離”と計っちゃっているんです」

 東京ドームは両翼100メートル、中堅122メートル、左・右中間110メートルで、北九州市民球場は両翼92メートル、中堅119メートル。見ている側とすれば“狭い球場だから本塁打になった”と考えやすい一方、プレーしている選手は球場の大きさによって打つ感覚が異なってくるという。

「無意識で距離を測っているから、(狭い球場だと)打球はそれなりになっちゃうじゃないですか。絶対そうだと思う」

 栗山の仮説が正しければ、セ・リーグは狭い球場で戦うことが多いため、全体的に打つ感覚が小さくなっているのかもしれない。それが得点力の差につながっているのだ。

「パ・リーグの方がスケールの大きいエースクラスが育ちやすい」という声も聞こえるが、投手と打者は対戦を通じてそれぞれ高め合う関係にあり、浅村や柳田悠岐(福岡ソフトバンク)、茂木栄五郎(東北楽天)のように強く振ってくる打者が多いこともパ・リーグの投手力向上に関係していると思う。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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