ソフトバンク待望の正捕手へ――170センチ捕手・甲斐拓也の奮闘記

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開幕前は高谷、鶴岡に次ぐ3枠目の座を争っていた甲斐だが、盗塁阻止率5割の強肩を武器に、その存在感は日に日に増している 【写真=BBM】

 身長はチーム最小の170センチながら、その存在感、頼もしさは日に日に大きくなるばかりだ。寝ても覚めても、考えるのは野球のこと。そんな日常が、幸せと成長をもたらしている。歓喜の優勝、胴上げの瞬間まで、福岡ソフトバンク・甲斐拓也の快進撃は止まらない。

一番はチームが勝つためのプレー

 正捕手の確立は、常勝を目指すソフトバンクにとって、長い間、懸案事項に挙げられている。2016年オフには細川亨(東北楽天)が球団を去り、高谷裕亮、鶴岡慎也の両ベテランに次ぐ、1軍3枠目を誰が奪うかが今春キャンプの焦点にもなった。斐紹、栗原陵矢、張本優大との競争を勝ち抜き、開幕1軍を手にしたのが10年育成ドラフト6位入団の甲斐だ。

――1軍の試合に出るチャンスを得ています。どのような心境でプレーしていますか。

 試合に出してもらっていますので、一番はチームが勝つためにプレーすることです。序盤戦は(東浜)巨さん、千賀(滉大)とのコンビでの出場がメーンでした。まずは巨さんと千賀のことを一番に考えることを大事にしています。つまり、巨さんのピッチングがあり、千賀のピッチングがあるということです。

――個性はそれぞれ異なります。

 もちろん、違います。ピッチングの内容で言えば、巨さんは緩急をうまく使うことがポイントです。特長であるカーブをどれだけ効果的に配球できるかを考えます。そしてコントロールが良いので、しっかりと両サイドに真っすぐを投げさせていくことですね。千賀に関しては速い真っすぐがあって、「お化け」と言われているフォークを持っています。打者はその2つの球種に対する意識があると思うんですけど、それだけにならないように、フォークがさらに生きるようにするにはどうすればいいかを考えてやっています。そういう部分では一人ひとりのピッチャーが違うので、それぞれの良いところを引き出せるようになりたいです。

――序盤戦は東浜投手と千賀投手の先発時にスタメン出場していました。しっかり時間をかけて準備できる分、責任も感じていたのではないですか。

 時間はいろいろな部分で使っていて、勝たないといけないという責任もありますし、巨さんと千賀に何とか勝ちをつけないといけないと考えています。ただ、巨さんと千賀だけに限らず、誰と組んでも責任はあるものです。いろいろなピッチャーのことを知っておかないといけません。

「心は熱く頭は冷静に」

――攝津正投手、中田賢一投手、石川柊太投手、松本裕樹投手が先発時にもスタメンマスクをかぶりました。さらに難しさを感じているのでは?

 そうですね。自分のまだまだ足りない部分、力不足を感じることがあります。すべての投手と組むときに言えるのですが、もっと楽なピッチングができたのではないかと反省点はその都度たくさんあります。そこはまだまだ自分の実力不足だと素直に受け入れています。

――今季、4月2日の千葉ロッテ戦(ヤフオクドーム)が東浜投手とのコンビでシーズン初スタメン。4日の楽天戦(Koboパーク宮城)の千賀投手、9日の埼玉西武戦(メットライフドーム)の東浜投手と白星をつけられませんでした。

 率直に言うと、その期間はきつかったです。何とか先発に白星をつけたいという気持ちが強かったですから。それができず、自分の責任を感じたところです。そのようなとき、遠征先で清水(将海)バッテリーコーチが僕のホテルの部屋を訪ねてきてくださって、「大丈夫、お前の思うようにやれ。何も怖がることはない」と声を掛けてくださいました。「100点じゃなくて50点でいい」という言葉に楽になりましたね。達川(光男)ヘッドコーチにも「勝ちたい」と相談していたんですが、「そうやって強く思っていることは大切だけど、心は熱く頭は冷静に」という言葉が腑に落ちました。シーズン序盤はコーチの方々の存在が大きかったです。

――4月11日の北海道日本ハム戦(札幌ドーム)で千賀投手の8回無失点の好投を引き出し、今季初白星をつけることができました。2回1死一、三塁。三走を刺したけん制はビッグなプレーでした。

 あのプレーは試合前から思い描いていたプレーでした。決まって良かったですし、事前に準備はしていたので、それが功を奏したんだと思っています。

――甲斐選手にとって、その肩は捕手としての大きな武器となっています。

 やっぱり、それがあるからこの世界に入れたということがありますし、1年目からそこが長所だと思ってやっていますので、ここだけは誰にも負けないと思ってやっているものです。

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