強いドラゴンズを取り戻したその先に… 2000安打達成・荒木の次なる願い

ベースボール・タイムズ

落合竜を攻守で支えた立役者

チームの勝利を第一に考える献身的な姿勢。2000本目の安打もそれが現れたような右打ちだった 【写真は共同】

 荒木のプロ初安打は入団2年目、1997年6月11日の広島市民球場で、広島・高橋建から記録した。

 2002年にレギュラーの座をつかむと、球界を代表する選手へと成長を遂げたのは2年後の04年。シーズン176安打を放って打率2割9分2厘をマークし、落合博満監督就任1年目のリーグ優勝に貢献した。この年に自身初となるベストナインとゴールデングラブ賞のタイトルを獲得すると、ベストナインは3年連続、ゴールデングラブ賞は6年連続で輝いた。

 恩師のひとりである落合氏は今年の4月、名古屋で開催した自身の講演会で荒木の秀でた能力に「二遊間のレギュラーとして試合に出続けるスタミナ」を挙げていた。事実、落合氏が指揮を執った8年間のすべてで規定打席をクリアしたのは荒木ただひとり。紛れもなく、4度のリーグ優勝と07年の日本シリーズを制覇した竜の黄金期を攻守で支えた立役者だった。

 しかし、13年以降はけがや若手育成の方針なども重なって出場機会が減り、直近2年間はシーズン100安打に遠く及ばなかった。それでもここまで走り続けてきた理由として挙げたのは単純明快なものだった。

「頑張り続けてこられた理由? 性格でしょう。一回始めたら辞めたくないなという。とにかく続けたいなと」。ベテランになっても手は抜かない。「プロ野球選手として給料をもらって野球をやっている以上は練習をし続けないといけない。それは常に心の中で思いながらやってきました」。信念を貫いてきた。

 春のキャンプでは2軍で若手に交じり汗を流して、迎えたプロ22年目。荒木はひとつの目標として2000安打の達成時期を5月に設定してシーズンに入った。予定通りとはいかなかったものの、目標に程近い6月上旬での達成。にもかかわらず、苦心の日々を過ごしていたと吐露した。

「森(繁和)監督はずっと黙っていらっしゃいますけど、イライラしていると思います。自分は結果を出していないのに2000本が近いから使ってもらっているんじゃないかと考えたこともあった。それが今年一番の苦しみでした」

 不振で試合に出られないことよりも、チームの力になれていないことにストレスを感じる。チームの勝利を第一に考える荒木にとっては当然の感情だった。

引き際は強竜復活の先にのみある

 森監督は荒木の偉業をたたえると同時に、さらなる記録達成へのサポートを約束した。

「アイツの場合、2000本は達成したけどまだ他にも記録が掛かっている。まだまだチームにとって必要な選手。けがなくやってもらいたい。(記録の達成は)チームにとってもいいことだから、どんどんやってもらいたいし、こっちも協力をする」

 指揮官は個人記録の達成がチームに好影響をもたらすことに期待を寄せている。借金生活に苦しんでいる現状だが、荒木の偉業が迫っていくと同時にチーム状態も上向き連勝の傾向も増えた事実がある。何より、荒木という選手がチームの勝利を第一に考えられる存在であるからに他ならないだろう。2000安打達成の記者会見の最後に荒木は今後の目標を語るなかで、自身の引き際に触れながら切なる願いを明かした。

「心の底からこのチームが強くなっていくこと。これを次の目標としたい。常々言っていますけど、自分がスタメンではないとしても走れる状態をつくっておくし、守れる体にしておきたい。とにかく(チームが)強くなりたい。そのなかのひとつのピースになれればいいなと。(1000得点や400盗塁の記録も迫っているが)今はそんなことより、強くなったチームのなかで自分は辞めていきたい。できることはすべてやっていきたい」

 荒木は強いドラゴンズを取り戻すための「ひとつのピース」に徹する強い覚悟を表した。あくまで中心となるべきはこれからのドラゴンズを担う次世代の若手たち。彼らを新たな常勝軍団の一員へと成長させる指南役となれるのは背番号「2」以外に存在しない。11年シーズンから遠ざかっている栄冠を再び手にし、歓喜の輪の中にいる荒木の姿に出会いたいと強く思う。

(高橋健二/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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