宮里藍「これ以上ないゴルフ人生」 引退会見 一問一答

スポーツナビ

12年にピーク そこで立ち止まってしまった

――4、5年前からモチベーションが上がりにくくなったと話していたが、その一番の要因は?

 12年の後半なんですけれど、12年は2勝していて、自分の中でも、09年に試合を勝ってから4年間勝ち続けていて、(世界ランキングで)ナンバーワンになったり、自分でもプロゴルファーとしてピークを迎えているという感覚はありました。それなのにメジャータイトルを獲れないというのは逆に葛藤もあって。自分の中で、そういう風に考えなくても良かったんじゃないかなと今は思うんですけれど、こんなに一番良い時に、調子が良くて自信がある時にメジャーで勝てなければ、次はどうしたらいいんだろうと、そこで一度立ち止まってしまったのが原因だと思っています。そこから自分自身を見失ったというか、次をどこにモチベーションを置いて、どういうふうに立て直していけばいいんだろうとすごく悩みましたし、そこが一番難しかったですね。

――世界で戦う厳しさをこれからの若い選手たち、ゴルフで世界を目指す選手たちに、自身が経験した中で一番伝えていかないといけないことは?

 もちろんいろいろな形の挑戦があると思いますが、私が経験した中では米国ツアーは移動も多いですし、芝のコンディションも毎週変わっていって、天候も目まぐるしく変わりますし、その中でいろいろな引き出しを作っていくのに、私の場合は時間が掛かったので、そこでどれだけ忍耐強く自分自身を保てるかが勝負になるんじゃないかなと思っています。私もそうだったのですが、そこで自分が分からなくなるというか、今まで戦えていたものが戦えなくなるというか、今まで武器だったものが武器でなくなってしまう瞬間がどうしても出てきてしまいます。それは米国でやるにせよ日本でやるにせよ、誰もが一度は通るところだと思っていて、場所は関係ないと思います。私の場合は、自分と向き合うのがほぼ趣味に近かったというか(苦笑)、それがあまり、苦痛というよりも集中していく方にエネルギーを持っていくのが好きだったので、そこがうまく作用したのではないかと思います。

――今、お父さんに声をかけるとしたら?

 うちの家族でゴルフを(最初に)始めたのは実は母なのですが、本当に両親共々、今までたくさん支えてもらいましたし、特に父はコーチとしても、たくさんケンカもしました。素直でない私の部分も理解してくれて最後の方はうまく歩み寄れたと思っています。本当にたくさんの思い出を共有できたんじゃないかなと思っていて、プロゴルファーとしてそれはすごく幸せなことだと思っていますし、両親には感謝の気持ちしかないので、本当にありがとうございますと伝えたいです。

横峯さくらには事前に報告「皆さんがよく知っている彼女のリアクションだった」

――ちょうど1年前はメジャーで優勝争いもしていた。優勝も遠くないというような感覚はあったか?

 今の方がより手応えを感じている感覚はありますね。もちろん、いろいろ取り組んでいることがようやく形になりつつあるという手応えなんですけれども。でもゴルフは不思議なもので調子が良いからといって、結果が残るというわけではありません。やはりそこは、少しずつ試行錯誤をしながら試合には取り組んでいるので。でも前回の試合の中京テレビ・ブリヂストンレディスオープンではかなり自分が思い描いているものに近いものが出せたんじゃないかと思っています。その感覚もすごく久しぶりです。どうしても最後に優勝してから5年くらい時間が経っているので、自分が勝っていたときのイメージもどんどん印象が薄くなっていってしまっていますし、勝ち方を忘れてしまうので。その辺りも、今年は自分にとって新たなチャレンジになるのかなと思っています。

――中学時代からずっと大事にしている、座右の銘は?

「意志あるところに道はある」という言葉です。この座右の銘は、過去だけでなくてこれからも大事になると思います。

――これまでの意志はどんな意志で、これからはどんな意志でどんな道を歩んでいきたい?

 本当に強くなりたい、プロとして上で戦える選手になりたいと思ってやってきました。ジュニア、アマチュア時代からやってきましたし、それが今、形になってこういう風なキャリアになったとは思っています。それは今シーズンの残りの試合は続きます。今後に関しては、自分の気持ちに正直に、やりたいことを模索していこうと思っています。今後は少しゆっくり休みながらで、やりたいことを模索して、まだ次の意志は固まっていないのですが、でもそれでもいいのかなと今は思っています。

――横峯さくらプロとは幼いころから一緒にやってきた。横峯プロには事前に伝えた?

 去年の10月くらいには話したと思います。本人のリアクションとしては、そんなに驚いていなかったというか。皆さんがよく知っている彼女のリアクションだったんじゃないかなと(笑)。でも逆にそれが私はうれしかったといいますか。いつかは来るであろうタイミングが今だったんだねという形で、何の驚きもなく、でもこれからもお互いに頑張ろうねという話はしたと思います。

――先ほどロレーナ・オチョアさんの話が出ました。彼女が28歳で引退して、お兄さんの優作プロと自分の“引き方”について話し合ったと聞いたが、どういう風に受け止めたか?

 ロレーナの引退については、私自身、衝撃を受けたことは覚えています。彼女こそ突然の引退だった気がしますし。でも本当に引き際まで格好良かったなというのは印象に残っています。世界ナンバーワンで彼女こそまだまだこれから戦える選手でしたし、メキシコを代表するプロスポーツ選手が数少ない中で、彼女の影響はすごく大きかったですし、本当に自分の気持ちを大事に、やりたいことに忠実に決断をするというところにおいては、すごくシンプルだったと思います。本当にいさぎよかったです。アニカ(・ソレンスタム/スウェーデン、元世界ランキング1位、08年に引退)の時もそうでしたが、引き際というのは本当にいろいろな形があるんだなと思いました。

「幸せな選手時代だったなと思います」

「選手として幸せだった」。宮里はそう語り、会見を締めくくった 【写真:ロイター/アフロ】

――昨年の夏に決断に至ったということだが、そこできっかけがあったのか?

 昨年はリオデジャネイロ五輪があったので、3週間くらいツアーが休みになりました。8月くらいに3週間お休みをもらえるということは、プロになって初めてです。そのタイミングがすごく大きかったのではないかと思っています。自分の気持ちについてゆっくりと考える時間が、そこで初めてあったというか。もやもやしている自分の思いはずっとありましたが、試合はこなしていかなくてはいけなかったので、なかなかそこと向き合うのが難しかったです。試合になれば試合をこなすことに意識やエネルギーを使いますし。ですので、そこの3週間のタイミングでしっかりと整理をつけられたという形です。

――長い間、米国ツアーで活躍している姿を見てプロゴルファーになった選手、目指している選手がいると思います。米国ツアーでやっていく上で必要なことは?

 そうですね……難しい質問ですね。その選手によってたぶん必要なものが変わってくると思うんです。私の場合で言わせていただくと、本当に自分自身のプレースタイルの確立という意味では、すごく大事なことはたくさんありました。飛距離に惑わされず、自分自身のベストなゴルフはどこにあるか。この追及にすごくエネルギーが必要でした。ほかと比べないことだと思いますし、どの国でやっても自分のゴルフさえしっかりとしていれば戦えると思います。ただ私は自分自身と向き合うことは趣味の範囲に近いので(笑)。結構、精神的に追い込んでいくことも好きではあるのですが、苦しいときにも自分から逃げないのが左右してくるのではないかと思います。

――03年のアマチュア優勝については、選手生活を終えようとしている今、どんな位置付けか? 最後にもう一度あの舞台に立ちたい?

 本当にあの優勝は私にとってターニングポイントになった瞬間でしたし、自分が女子高生のままプロになるなんて想像もしていなかった世界でした。それ以降、本当に数えきれないほど、たくさんの経験をさせてもらいました。本当にあのミヤギテレビ杯の試合には感謝しかありません。できればこの思いをもったまま出場できたらという思いはありますが、今のところサントリーレディス以降は、米国ツアーに戻る予定でいるので(出場については)はっきりとここでは申し上げられないです。でも高校生活3年間を過ごした仙台であれだけ良い思い出を作れて、それ以降、たくさんの方が東日本大震災の後も私のことを応援して下さって、それ自体が本当にうれしかったです。今度は、私が何か皆さんに恩返しできるものがあればと思います。

――お母さんに掛けてもらった言葉で、思い出に残っているものはありますか?

 私の両親に関しては「見守る」という表現がぴったりで。特に掛ける言葉もなく、私がやることをたんたんと見てくれている感じでした。それはすごくありがたかったですし、自分が進む道をただ見守ってくれているというのは、たぶん間違った方向にはいっていないなと感じていました。その距離感はすごく難しいと思うんです。でもそれをやってくれて、すごくありがたかったです。

(最後に再びあいさつ)

 本日は本当にお忙しい中、この場にお集まりいただいて誠にありがとうございました。約15年間プロの選手としてここまでプレーをしてきて、本当に……(言葉に詰まる)。本当にたくさんの方にサポートしてもらえたことはうれしかったですし、選手として幸せだったなと思います。重複しますが、自分の引き際に対しての寂しさは一切なく、本当に感謝の気持ちを持って最後までプレーできることをありがたく思っています。支えてくださいましたスポンサーの皆さま、それから家族、友人、ファンの皆さま、そしてここにいる皆さまも含めて、幸せな選手時代だったなと思います。本当に感謝しています。残りシーズンも頑張っていきますのでもう少しよろしくお願いいたします。本日は本当にありがとうございました。

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