ルーキー源田が好調・西武の潤滑油 “最高と最悪”を広く考え2番に定着

中島大輔

浅村のフルスイング封印に源田の存在

いまや西武打線に欠かせない存在となった源田。打率は3割を超え、リーグトップの13盗塁と持ち前の機動力も発揮している 【写真は共同】

 ゴールデンウイーク明けの5月9日から28日までの16試合を12勝4敗。埼玉西武が上昇気流に乗っている。

「チームが強くなってきている実感? ありますね。一人一人が役割をしっかり確認してできているし。そこが大きいところじゃないですか」

 交流戦前最後の本拠地3連戦、19日からの福岡ソフトバンク戦を2勝1敗で勝ち越した直後、キャプテンで3番を打つ浅村栄斗は充実した表情で語った。

 初戦をエース・菊池雄星で落とした後、2連勝に大きく貢献したのが浅村だった。持ち前のフルスイングで2試合連続本塁打を放ったばかりでなく、カード3戦目の初回には無死一、二塁から自らの意思でセーフティーバントを決め、球場全体をざわめかせた。

 いまも「フルスイングは一番大事」という浅村だが、今季はコンパクトな振りでチームバッティングを優先する場面が少なくない。辻発彦監督からチームのキャプテンに指名された男は、なぜときに、代名詞とも言えるフルスイングを封印するようになったのだろうか。

「今年は特に源田(壮亮)が自分の前でいいつなぎだったり、盗塁をしたりして得点圏で回ってくることが多いので、とにかくヒットでランナーをかえすという気持ちでやっています」

 2番・ショート、源田壮亮。トヨタ自動車出身で新人王候補の最右翼と目されるこの左打者こそ、打線の潤滑油になっていると嶋重宣打撃コーチも指摘する。

「うちは源田が2番にいることが大きい。あそこでいいつなぎをできれば、その後には強力なクリーンアップがいますからね」

素顔はマイペース、いい意味で脱力系

 1番の秋山翔吾がリーグ3位の打率3割3分7厘(5月28日現在、以下同)とヒットを量産し、クリーンアップには浅村、中村剛也、エルネスト・メヒアと右の強打者が控える。言わずもがな、2番の働き次第でチームの得点力は大きく変わってくる。

「自分の役割は、チャンスでクリーンアップにどう回すかですね。2番の重要性? 特に(感じていないです)」

 そう言ってニッコリ笑った源田は、朴訥(ぼくとつ)な男だ。9番を打っていた開幕直後の4試合と、以降2番を任されるようになってからの意識の変化について、「あんまり。やることは変わらないと思うので」と平然と言い切る。マイペースで、いい意味で脱力系だからこそ、ルーキーにして2番ショートの重責を担えるのかもしれない。

 嶋コーチは源田の良さについて、「視野の広さ」を指摘する。

「凡打になるにしても、どういう凡打がチームにとってプラスになるかを考えています。いいバッターでも10回の打席で7回失敗するので、たとえ凡打でもチームにとってプラスになるアウトのなり方をすれば、そこからクリーンアップにつながっていく。たとえば足の遅いランナーが一塁にいれば、内野ゴロでもゲッツーにならなければ自分が塁に残ることができ、盗塁を仕掛ける。それで得点圏に行けばクリーンアップがかえすこともできるだろうし。2番がヒットでつなげれば最高ですけど、最高と最悪のなり方を広く考えて、カウントによっていろんな役割をこなしてくれています」

 実際、源田はアウトのなり方まで考えているという。だからこそベンチは無死一塁で打席が回ってきた際、必ずしもバントのサインを出していない。個人の判断に任せられるのは、“最高と最悪”を想定しているからだと嶋コーチが続ける。

「いまは源田も結果が出ているので、アウトを1個あげるよりも、(辻監督の指示として)“打たそうか”というのもあると思います。いずれ調子が落ちてきたときには、クリーンアップの前でしっかり送るだけでなく、エンドラン、バスターエンドランもできる。バントが増えてきてシフトを引かれたら、自分でそれを見て、一瞬の判断でバスターに切り替える。瞬時の判断は視野を広く持っておかないとできないし、そうなってくると思います」

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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