田中将大の奪三振ショーに爽快感も…真のエースへ大事なのは今後
メジャー自己最多の13奪三振
2試合連続KOだった田中。背水の陣だった26日のアスレチックス戦は負け投手となったものの、8回途中1失点、メジャー自己最多となる13三振を奪った 【写真は共同】
過去2戦連続で痛打された後、背水の陣で臨んだマウンド。田中はアスレチックス打線を相手に7回3分の1を5安打1失点に抑え、無四球のままメジャーでの自己最多となる13三振を奪った。特にスライダーが冴え渡り、昨年9月のレイズ戦以来通算8度目の2ケタ奪三振。過去2登板ではブーイングを浴びたニューヨーカーから、最後は盛大な拍手を送られてマウンドを降りた。
「手応えがあった。今日は良かったことは良かったことで、それはそれで良い。コンスタントにやっていくことが僕に求められているもの。チームは負けているし、今日1回良かったくらいでは、心からは喜べない」
試合後のそんな言葉通り、田中がこれほどの投球をしたというのに、打線の援護がなく、リリーフ投手も打たれ、ヤンキースが1対4で敗れたことは残念としか言いようがない。不運にも今季4敗目(5勝、防御率5.86)を喫し、渡米後初の3連敗。しかし、今夜に限っては、敗戦は田中の責任ではなかった。
無四球のまま13奪三振以上を奪ったヤンキースの投手は、過去20年ではデビッド・ウェルズ、ロジャー・クレメンス、マイク・ムシーナ、マイケル・ピネダに続いて今夜の田中が5人目。すべて空振りで奪い続けた“奪三振ショー ”には、勝敗を超えた分かりやすい爽快感と魅力があった。
「(田中のピッチングには)勇気づけられた。スプリッター、スライダーの両方が良かった。私たちがこれまでも見てきたマサヒロだった」
試合後、ジョー・ジラルディ監督もそう語り、敗戦の中でも顔をほころばせた。
過去2試合乱調の原因が改善
「キャリアの中でも最も悪かった2登板」。5月14日のアストロズ戦、20日のレイズ戦での先発機会を田中はそう評してきた。実際にこの2試合では通算4回3分の2で14失点、7被本塁打。これまで安定感を売り物にしてきた田中が、信じられないほどのペースで長短打を浴び続けた。
特にデレク・ジーターの引退式後にESPNで全米中継されたアストロズ戦で火だるまにされた印象は強烈。“田中は大丈夫なのか”という懸念は大きくなり、例によって、2014年に靭帯部分断裂を負った右ヒジの状態を心配する声まで飛び出していた。何より、そんな状況だったからこそ、最新登板での好投の意味とインパクトは余計に大きかったのである。
「(過去2戦では)制球が乱れており、どの球種も真ん中付近に集まってきたところをとらえられている。スライダー、スプリッターのキレも好調時に劣り、特にスライダーは良くない。制球、キレのどちらかが良ければここまで崩れることはないが、両方の不調が重なったために歯止めが効かなくなった」
アスレチックス戦前、某メジャー強豪チームのスカウトは田中乱調の原因をそう分析してくれた。そこで挙げられた“スライダー”“スプリッター”“制球力”という3つのポイントが、今夜は見事に改善されていた。
本来は25日のロイヤルズ戦で先発のはずが、雨天中止でスライドとなり、得点力ではリーグ・ワースト2位というアスレチックスと対戦になったことが幸いに働いた部分もあったのだろう。この日は正捕手のゲーリー・サンチェスではなく、今季は相性が良いオースティン・ロマインとバッテリーを組んだことも大きかったのかもしれない。理由はどうあれ、自己最大級のスランプに苦しんだエースがポジティブな方向に踏み出したことは間違いないはずだ。