小川や久保、ゴールに特化した個性派たち U-20W杯に臨む21名を徹底紹介 FW編

川端暁彦

スピードタイプでも個性が異なる岩崎と田川

岩崎はスピードが魅力のムービングストライカー 【写真:FAR EAST PRESS/アフロ】

 小川の相方として期待されるのは岩崎悠人だ。中央で構えるタイプの小川に対し、「得意技は走ること」と言い切るムービングストライカーである。疲れ知らずのスタミナと相手DFをぶっちぎるスピードを兼ね備え、パワフルな当たりの強さと身体的な柔軟性も併せ持つ稀有な肉体の持ち主。京都橘高校に所属していた昨季はJリーグ各クラブによる争奪戦のターゲットとなったが、地元の京都を進路として選んだ。

 目指す選手は日本代表FW岡崎慎司。「泥臭く戦いたい」と、昨年は岡崎の代名詞であるダイビングヘッドの練習にも励み、速さを生かしたプレーだけでなく、クロスボールに合わせる力を備えようと努力を重ねてきた。

 加入した京都では早くもポジションをつかみ、「吸収力がすごい」と布部陽功監督を驚かせる成長を見せて活躍の頻度を増やしてきた。ただ、京都でFWではなくサイドハーフとしてプレーしている点は代表チームにとっては微妙に不安要素で、本人もFWの感覚が少し鈍っている点は認めている。直前の2試合で感覚のチューニングはできたと信じたいが、あとは実戦の中で取り戻すしかない。

田川は岩崎と同じスピードタイプながら、常にゴールを意識する“突撃型”のプレーヤー 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 またギリギリでメンバーに滑り込んできた田川は岩崎と同じスピードタイプのストライカーで、“突撃型”とでも評すべき直線的なプレーを売りとする。技術的には粗削りで、高身長の割りにヘディングも苦手。戦術的なフィット感もまだないが、常にゴールを意識しながら勇敢に突撃していくプレーには期待感が漂う。代表招集当初は「考えすぎてしまった」と“らしさ”を出し切れていなかったが、オフ・ザ・ピッチを含めて徐々に溶け込んできた成果を本番で出したい。

久保はスペースを使うのが抜群にうまい

ドリブルが特長と語る久保だが、スペースを使うのも抜群にうまい 【写真:FAR EAST PRESS/アフロ】

 FW最後の1人は日本サッカー史上最年少、15歳でのU−20代表入りとなった久保である。いまさら説明するまでもないが、10歳でバルセロナに渡って技を磨き、帰国後もコンスタントに結果を出しながら所属するカテゴリーの飛び級を重ねてここに至った麒麟児(きりんじ)だ。この年でU−20代表に入って何の違和感もないレベルの選手が出てきたのは元日本代表FW森本貴幸(川崎フロンターレ)以来となるが、肉体的に早熟だった森本とは異なり、久保は肉体的にはまだ発展途上。この点でも特異なタレントだ。

 技術と戦術が一体化したようなプレーぶりは観ていて単純に面白い。「自分の特長」だと語るドリブルはボールタッチの柔らかさといった技術的な点も優れているが、コース取りに真骨頂があり、目前の相手を抜き去るにとどまらず、次のプレーにしっかりつなげてくるうまさがある。ドリブルが得意と言いながら球離れの良さもあり、ラストパスも出せる。さらに「フリーになるのがうまい」とMF市丸瑞希(ガンバ大阪)が言うように、DFとMFの間で瞬間的にできる「エアポケット」を巧みに使う位置取りのセンスも光る。そして何よりゴール前で慌てることなくシュートを蹴り込むというストライカーとして必要な資質を高いレベルで備えている。

 とはいえ、前述のように肉体的にはまだまだ発展途上の選手ではある。このレベルで90分フルタイムを戦い切るのは簡単ではなく、守備のリスクも考えれば交代出場が中心となりそうだ。逆に全体が間延びしてきた時間帯で、スペースを使うのが抜群にうまい久保が出てくるのは、相手にしてみると何とも嫌らしい。タフな国際大会で世界レベルの相手が本気で久保をつぶしに来たときにどんなプレーを見せられるか。過剰に期待するべきではないが、それでも楽しみには違いない。

個性豊かなタレントがどう輝くか

日本の初戦は21日の南アフリカ戦。個性豊かなタレントがどう輝くか 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

「決定力不足」や「ストライカー不在」と言われて久しい日本サッカー界だが、このU−20日本代表では「FWの仕事はまずゴール」と言い切る指揮官の下、個性豊かなタレントが集められた。

 チャンスに乏しい試合展開も十分に考えられる中で、東京五輪世代のストライカーたちがどんな輝きを見せられるか。それは3年後の2020年はもちろん、今後10年の日本サッカー界を占う材料にもなるだろう。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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