【ボクシング】田口良一が語る日本人4団体制覇の本音 誰が強いのか「絶対に統一戦やるべき」

船橋真二郎

リスクの高い試合をしてこそプロ

名古屋で行われる田中の試合を見る予定になっている田口。試合結果によっては、一気に統一戦の機運は高まりそうだ 【写真:ロイター/アフロ】

 田中の初防衛戦は、生中継するCBC(TBSでも生中継が決定)に招かれ、田口がゲスト解説としてリングサイドの放送席に座ることになっている。田中が勝利すれば、リング上から統一戦をアピールするのは間違いなく、対決ムードは否応なく熱を帯びるはず。

「まだまだ成長段階」と田中を評するように若きタレントのポテンシャルには田口自身、脅威を感じている。だが、「自分もまだ30歳なので、伸びしろはあると思っている」と言うように田口もまた持ち前の好戦的なスタイルだけではなく、世界チャンピオンになって以降もボクシングの幅を広げてきており、まだ成長途上の印象もある。

「正直、絶対に勝てるとは言えないし、負けるリスクも当然あります。でも、そういう試合をしてこそプロだし、盛り上がると思う」

 前述のように日の出の勢いだった井上の挑戦を田口は日本王者として堂々と受けて立った。それも一度はスパーリングで一方的にやられた経験があった相手なのである。もともと「強い相手とやってこそ」の気概は持っており、そうでなければ、その後の田口の飛躍もなかったのではないかと思える。

統一戦に向けて求められる「内容と結果」

昨年末の試合ではドロー防衛ですっきりと結果を残せなかった。しかし次戦ではしっかり勝利し、次のステップへと踏み出すはずだ 【スポーツナビ】

“ウィナー・テイク・オール”がボクシングの鉄則と言われる。だが、ただの勝者というだけでは得られないものがあるのが、チャンピオンが乱立する今の時代。田中との一戦で“1勝”以上の何かをつかみたいと田口は望む。その思いは「田中選手も自分も勝負師」と田口が表現するように田中も同じだろう。

 そのためにも田口にはやるべきことがあるという。前回5度目の防衛戦は「その前の宮崎亮(井岡)戦の試合内容が良かったこともあって、(渡辺均)会長が候補の中から自分に挑戦者を選ばせてくれた」が、当時16戦全勝13KOだったカルロス・カニサレス(ベネズエラ)に不本意な引き分け防衛に終わった。
「あの試合で評価が下がったと思うので、早く試合をして、また評価を上げていかないといけないと思うし、会長にも『これなら(統一戦も)いける』という試合を見せないといけない。次は内容、結果ともに求めていきます」

 田口の次戦は夏頃の予定でライバルの結果が出てから。日本人王者同士の王座統一戦の機運は高まるのか。まずは、それぞれの戦いに臨むことになる。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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