背番号「2」とともに流れた幸福な時間 ジーターの永久欠番セレモニーに寄せて

杉浦大介

背番号2の永久欠番セレモニーで大歓声を浴びたジーター 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

「時は過ぎ去り、記憶は忘れゆくものだが、家族は永遠だ。ヤンキースというファミリーの一員でいられることに感謝したい」

 5月14日(現地時間)、伝統のヤンキー・スタジアム。現役時代から慣れ親しんだ場所での永久欠番セレモニーでも、デレク・ジーターの佇まいとスピーチは以前と変わらずにそつがなく、爽やかだった。

往年のスターが数多く祝福

 2014年限りで引退したヤンキースの“キャプテン”。そのキャリアを讃えるべく、この日の式典には当然のように超満員の観衆が集まった。セレモニーが始まると、センター後方のモニュメントパークに設置された背番号2の記念碑のベールが取り除かれ、その後に招待されたゲストたちが次々と紹介されていく。

 マリアーノ・リベラ、ホルヘ・ポサダ、バーニー・ウィリアムズ、ジョー・トーリ、ポール・オニール、ティノ・マルチネス、レジー・ジャクソン、松井秀喜……etc。過去に感謝し、現在を祝福する。いつもながら、メジャー1の名門球団であるヤンキースは素晴らしい雰囲気を作り出してくれた。

 場内の熱気が最高潮に達し、フランク・シナトラの「マイウェイ」が流れる中でジーターとハナ夫人がフィールドに登場。その瞬間、スタジアムはこの日最高、いや今季を通じても最大の歓声に包まれたのだった。

「“自分の立ち位置を誰かと交換できるとしたら、誰を選ぶ?”と訊かれたことがあった。“交換したいと思う人、選手なんて誰もいません”と答えた。なぜなら、私はこれほど素晴らしいオーガニゼーションの一員になれて、スポーツ史上最高のファンの目の前でプレーできたからだ」

 現役を離れて2年、42歳になったジーターのそんな言葉に嘘はなかったのだろう。ニューヨークを愛し、愛されたスーパースター。現役時代は自身にばかりスポットライトが当たることを好まなかったジーターだが、この日の笑顔からは、大切な場所へと戻って来たことへの素直な喜びがにじんだ。

 セレモニーの後に行われたアストロズ戦では、ヤンキースは7対10で敗れて記念すべき1日を飾れなかった。先発した田中将大が1回2/3でなんと7安打、4本塁打、8失点とまさかの大乱調だった。

 この日の敗戦の後でも、 22勝13敗と予想外の好スタートを切ったチームが良い方向に向かっている事実に変わりはない。しかし、現実的に優勝を狙うには、やはりまだあと1〜2年はかかるだろう。再建途上のチームを目の当たりにして、“常勝”と呼ばれた頃のヤンキースとジーターに改めて懐かしく想いを馳せたファンも多かったかもしれない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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