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昇格組のC大阪、守備整備が奏功し健闘中
躍進への鍵は清武と柿谷の生かし方

山村のコンバートが序盤の快進撃を演出

山村(24)の前線へのコンバートは序盤の快進撃を演出した最大の要因だ
山村(24)の前線へのコンバートは序盤の快進撃を演出した最大の要因だ【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 守備偏重の強化を進めた分、攻撃面の成熟は遅れがちだった。序盤の磐田、浦和戦では杉本健勇と柿谷を2トップに配置する形を取っていたが、前線でタメを作れず、両サイドの水沼宏太や関口訓充ら、両ボランチが前に出ていけない状況が続き、チャンスらしいチャンスを作れずにいた。得点も浦和戦のヨニッチのリスタートによるゴールだけ。流れの中から取れる雰囲気は皆無に近かった。


 ユン監督はこの苦境から脱するため、浦和戦途中から山村和也を杉本と2トップ的に起用し、柿谷を左サイドに回す配置転換にトライ。改善の兆しが表れたと見るや、続く3月11日の北海道コンサドーレ札幌戦から山村を前で先発起用する布陣にスイッチする。セビージャから2月頭に加入しながら右太もも違和感で離脱していた清武も同ゲームから戦列復帰。中盤で新たなリズムをもたらしたこともあって、18日の鳥栖戦では山村の決勝ゴールでJ1初勝利を飾った。山村のコンバートは、序盤の快進撃を演出した最大の要因と言っていいだろう。


「前線に入ってまだまだのところはあるけれど、得点を取れているのは大きい。健勇含めてボランチ、サイドと連係しながら、もっとうまくやっていけたらいいと思います」と新境地で新たな可能性を示した背番号24は大きな手ごたえを口にしていた。


 清武が3月の日本代表2連戦の後に再び離脱したものの、関口がサイドからの突破という持ち味を遺憾なく発揮してチームに貢献した。4月8日に行われた鹿島アントラーズ戦の決勝弾は、後半開始早々の関口のクロスから山村が打点の高いヘッドで決めたもの。「キヨが戻ってきてもポジションを取られないようにしないと。『頑張れ』と(小笠原)満男さんにも言われた」と31歳のアタッカーは負けじ魂を口にしていた。関口を筆頭にバックアップの選手層が厚くなったのもC大阪の今季の特徴だ。


 鳥栖戦で負傷してリーグ2試合先発から外れた山下達也の穴を大卒プロ2年目の木本恭生が埋めたのも大きかった。183センチの木本はDFでもボランチでもプレーできる。ユン監督にとっては“使い勝手のいい”選手なのだろう。「落ち着いてやれているし、自分の持ち味も結構出せている」と本人も自信をのぞかせる。リードしている終盤に出てきて守りを固める田中裕介らもそうだが、指揮官が状況や時間帯によってチョイスする選手たちがきちんと役割を果たしているのも、ここまでの好調につながっている。

復帰1年目での優勝争いを目指して

清武(右)と柿谷の生かし方が今後の躍進に向けて鍵を握る
清武(右)と柿谷の生かし方が今後の躍進に向けて鍵を握る【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 そして、もう1つの重要ポイントが清武だろう。4月16日に行われたG大阪戦の後半途中から復帰し、続く22日のヴァンフォーレ甲府戦を経て、26日の鳥栖とのルヴァンカップでフル出場。これを見定めたユン監督は、続く5月1日の川崎戦では関口に代えて右サイドのポジションで先発起用する。その司令塔が山村の先制弾につながるスルーパスを出し、自らもダメ押しとなる2点目を奪ったことで、本人にもチーム全体にもさらなる弾みがついたのだ。


「シーズン途中からキヨ君が入ってきたのは一番大きなところ。もちろん和也君がFWに入ってヘディングで競り勝ってくれていたのは大きかったけれど、キヨ君がいれば球離れもいいし、どこでキープして出したらいいかの判断もすごくいいから、和也君を目掛けて蹴らなくてよくなった。今のチームにはホントに欠かせない選手」と山口もその絶大な存在感を認める。非凡なテクニックとセンスを兼ね備えている背番号46は「違い」を生み出せる屈指のタレント。清武をどう有効活用していくかが、この先のC大阪の動向を大きく左右するだろう。


 本人は主に右で起用されていることで「サイドで起点を作りながら、うまく中に入りながらというのを意識している。もっと流動的に動けるようになれればいい」と杉本や山村、柿谷らとの連係強化を心掛けており、試合を重ねるごとにスムーズになってきた印象はある。その清武がもっとチャンスメークやゴールにダイレクトに絡めるようになれば、攻撃陣のゴール数も増えてくるはずだ。


 現時点のC大阪の通算得点は11で、リーグ最多の浦和の24より13も少ない。杉本と山村が3点、柿谷が1点という数字はやはり物足りない。「前にいる自分がもっと取らないといけない」と杉本は自覚を口にする。前線3枚に託される責任はやはり大きい。


 とりわけ、4月1日の横浜F・マリノス戦でのPK1本にとどまっている柿谷をどう生かすかは今後の重要な課題だ。「自分はサイドを突破してクロスを上げる選手ではない。もう少しゴール前で仕事ができればいいと思います。今日もバイタルエリアに全然入っていない。本来のポジションからするとだいぶ絞ったところでやっている分、マル(丸橋)には負担をかけていますけれど。とりあえず今は結果が欲しいですね」と柏戦後、ゴールへの渇望をにじませた。


 柿谷がリーグ戦で21得点を挙げた13年シーズンのような輝きを放つためには、ゴール前に入り込む回数を増やさなければならない。ユン監督が杉本・山村コンビをファーストチョイスにしている以上、難しい部分はあるが、試合中のポジションの入れ替え、あるいは柿谷を再び真ん中で使うなどのオプションも考えるべき。そういうプランも知将の頭にはあるはずだ。


 さしあたって、14日の次節・サンフレッチェ広島戦の戦い方が注目されるところ。「上にいくチームは連敗しない。それを意識してやりたい」と山口も語る。J1残留、さらに復帰1年目で優勝争いに絡むことを目指し、C大阪の奮闘は続く。

元川悦子
元川悦子

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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