昇格組のC大阪、守備整備が奏功し健闘中 躍進への鍵は清武と柿谷の生かし方

元川悦子

柏戦では8試合ぶりの黒星を喫するも……

柏戦は0−1で敗れたが、C大阪は昇格組ながら4勝4分け2敗と健闘している 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 気温27.8度と初夏の陽気に恵まれた5月6日の日立柏サッカー場。1万4,015人の大観衆を集めたJ1第10節の柏レイソル対セレッソ大阪戦は白熱した試合となった。第3節から7戦無敗のC大阪にとって、序盤の勢いを本物の力にできるかどうかの分かれ道。左太もも負傷で3月の日本代表2連戦の後、離脱を強いられていた清武弘嗣も4月26日のルヴァンカップ・サガン鳥栖戦でのフル出場を経て、30日の川崎フロンターレ戦から先発に復帰し、柏戦はベストメンバーで臨むことができた。

 開始早々の3分に山口蛍→柿谷曜一朗→杉本健勇とダイレクトにつながってシュートまで持ち込み、8分には清武と柿谷がダイレクトパスの応酬を見せるなど、C大阪の入りは悪くなかった。彼らは今季昇格組とは思えないほど、互角の勝負を演じていた。

 ところが後半12分、アクシデントから失点する。丸橋祐介のクリアが柏のクリスティアーノに直撃。そのままゴールに飛び込んだのだ。「フリーな状況だったにもかかわらず蹴ってしまって、それが入ってしまった。もっと冷静に判断できれば防げた失点」と丸橋自身も悔やんだが、チーム全体のダメージは大きかった。

 C大阪はそこから一気に押し込まれ、立て続けに決定機を作られる。「相手に余裕が出てしまった。そこで勝負ありかなという感じ」と柿谷が言えば、「失点の後、全体的にラインが下がり、クリスティアーノとディエゴ・オリヴェイラの2人に押し下げられて時間を作られた。あの失点からどう持ち直していくのかが大事だった」と山口蛍も反省の弁を口にした。

 結局、C大阪は1点の壁を跳ね返せず8戦ぶりの黒星を喫し、ユン・ジョンファン監督も「今の状況には満足していない」と厳しい表情で語っていた。それでも10節終了時点で4勝4分け2敗の勝ち点16、7位というのは昇格組としては悪くない成績である。山口が開幕前に語っていた「残留ラインの勝ち点40をまず取る」という第一目標も早い時期にクリアできそうな前向きなムードも感じられる。序盤の勢いがチーム全体の自信になりつつあるのは間違いないだろう。

ユン監督体制、まずは守りの修正を図る

今季、ユン・ジョンファン(前列中央)監督を招へいしたC大阪。マテイ・ヨニッチ(前列左端)らを補強し、まずは守備を中心に強化した 【写真は共同】

 2014年のランコ・ポポヴィッチ、マルコ・ペッツァイオリ、大熊裕司、15年のパウロ・アウトゥオリ、大熊清、16年の大熊清と、過去3年間は頻繁に監督が入れ替わり、チームの方向性が揺れ動いてきたC大阪。昨季J2を昇格プレーオフの末に勝ち上がると、今季を迎えるにあたって大熊清氏を統括部長に専念させ、クラブOBであり、堅守速攻スタイルで鳥栖を躍進させたユン・ジョンファン監督を招へいした。

 大熊清監督時代は組織的守備を志向しながら、16年シーズンのJ2では通算失点46とリーグ最少の松本山雅より14も多かった。そこで、ユン監督体制では第一に守りの修正を図り、確固たるベースを築いた上で多彩な攻撃を目指すという考え方でチーム作りを進めていった。

 15〜16年にKリーグで2年連続ベストイレブンに輝いたマテイ・ヨニッチを補強したのもその一環。187センチの長身を誇るクロアチア人DFの加入で、課題だったリスタートからの失点も減ると期待された。プレシーズンは守備の約束事を徹底し、1シーズン通して走り抜ける体力作りにも時間を割いたという。

 こうした思惑通り、今季のC大阪は2月25日のJ1開幕節のジュビロ磐田戦をスコアレスドローからスタート。続く3月4日の浦和レッズ戦は1−3と大量失点を喫したが、その後のリーグ8試合で2点以上奪われたのは4月16日のガンバ大阪とのダービーだけ。大崩れすることはなくなった。

 10試合通算失点はリーグ最少の8。「ユンさんはボランチにバランスを求めているし、ソウザが前に行く部分があるから、自分は攻撃にいくのを自重している部分がある。でもそれでチームがうまくいっているなら、それでいいのかな」と山口も守備重視でプレーしていることを明かす。前からの連動したプレス、カバーリングの仕方、ボールの奪いどころなどの細かい約束事が明確になり、それに応じて選手たちが忠実に動いているのが今のC大阪。そこは過去3年間との目に見える違いだ。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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