OBが語る楽天快進撃の理由とは? 梨田監督の3度目“2年目V”へ根拠あり

ベースボール・タイムズ

近鉄、日本ハムに続いて楽天でも就任2年目での優勝を狙う梨田監督(左)と新人ながら勝利の方程式の一角を担う森原 【写真は共同】

 4月を球団史上初の2ケタ貯金11での首位で終えた東北楽天。チームを率いる梨田昌孝監督にとっては、2001年の大阪近鉄、09年の北海道日本ハムに続く3度目の“就任2年目でのリーグ制覇”へ向けて好スタートを切った形だ。その梨田監督の下、近鉄時代に先発ローテーションの一角として優勝を経験し、現在はスポーツコメンテーターとして楽天の試合解説なども務める山村宏樹氏に、今季の快進撃の理由と“2年目ジンクス”の根拠を聞いた。

先発投手の働きと福山の存在が大きい

――4月を16勝5敗の貯金11、「2番・ペゲーロ」の爆発や「守護神・松井裕樹」の働きなどで開幕ダッシュを決めた楽天ですが、この快進撃の一番の要因は?

 確かに2番・ペゲーロやリリーフ陣の働きはありましたが、一番は先発投手陣の頑張りだと思います。例年のイーグルスの先発陣は、早いイニングに失点して相手よりも先に降板する場面が目立ちました。でも、今年は違う。先発投手がしっかりとゲームを作っていますし、作っているからこそ攻撃陣にも良いリズムが生まれて、リードした流れのままリリーフ陣にバトンを渡すことができています。

――先発陣では新たにFAで岸孝之が加入しましたが、その岸が4月1勝で終わる中、美馬学と辛島航が3勝ずつを挙げる活躍を見せました。

 美馬と辛島の2人の活躍は大きい。岸が新たに加入して、彼らの中には絶対に危機感が生まれたと思います。去年までは則本(昂大)一人だけだったところに岸、そして美馬、辛島と、お互いに刺激し合いながら先発陣たちの中でもいい雰囲気、良い流れができていますね。

――4月のチーム打率2割8分1厘、23本塁打はともにリーグトップでした。打線の働きについては?

 まずはやっぱり打順ですよね。すでにいろいろなところで言われていますけど、事の発端は開幕戦で(オリックス先発の)金子千尋からどうやって点を取るのか、というところでした。岸がインフルエンザになった中で、2番から外国人を3人並べるという攻撃的な打線になった。茂木(栄五郎)は去年秋の段階で1番だと言われていて、2番を探していたところで、藤田(一也)でもなく銀次でもなく、ペゲーロがハマった。簡単にアウトをあげたくない、相手に恐怖心を与える意味でも「2番・ペゲーロ」の働きは非常に大きいですね。

――投手陣では森原康平、ハーマン、松井裕樹の勝利の方程式が完璧に機能しましたが?

 開幕前からある程度早い段階でハーマンから松井につなぐ形は決まった。そこへどうつなごうかと考えたときに、福山(博之)の存在が大きい。森原、ハーマンがダメでも福山がいるという安心感がありますし、梨田監督としたら福山を勝ちパターンに固定せずにもっとオールマイティーに使いたいという思いがあったと思います。あれほどチームのために献身的に投げてくれる投手はいない。負けている状況でも使いたいピッチャーですし、いつどこで投げても力を発揮できる。もちろん森原、ハーマン、松井の働きは素晴らしいですが、その活躍の陰には福山の存在があります。

2年目勝負のための1年目割り切り

――就任1年目の昨季は5位に終わった梨田監督ですが、去年と今年で采配面で変化した部分などはあるのでしょうか?

 投手も野手も、昨年はいろいろな選手を起用した。梨田監督が近鉄の監督になった初年度に僕も近鉄に入団したんですが、その時も僕も先発、中継ぎといろんな場面で試しながら使ってもらいました。僕だけではなくて支配下の投手はほぼ全員1軍で投げましたし、野手も1年目は多くの選手を使って2年目の飛躍へとつなげた。そのやり方は日本ハムの時も、今の楽天でも同じ。去年はいろいろな選手を使いましたけど、勝負をかける2年目の今年は選手を固定して使っていますね。

――1年目はある程度割り切って選手の力量把握に努めたということでしょうか?

 そうですね。外から見るのと実際にベンチから見るのとでは選手の評価も変わってきます。数字だけではなくて、どういう役割、どういう場面で力を発揮できるのか、2軍の選手も固定概念なく1軍で使って、いろいろと試していました。1年目にしっかりと選手の力量を把握し、そして2年目に勝負をかける。それが梨田監督の手法です。去年は嶋(基宏)に代わってルーキーの足立(祐一)を使いましたけど、それがチームとしてのリスクマネジメントにもなる。(嶋が4月29日に腰痛で登録抹消。代わりに足立がスタメンで出場)。チーム全員で戦うという、良い雰囲気も作れていると思います。

――山村さんが優勝を経験した01年の梨田バファローズと、今年のイーグルスを比べて似た部分などはありますか?

 近鉄は関西の球団だったのでワイワイガヤガヤしていて、その雰囲気とは少し違いますけど、チームのまとまりという部分では楽天の方がある気がしますね。若い選手が多い中でベテランにも危機感があって、チームのバランスが非常に良い。監督としても采配を執りやすいと思います。そして01年の近鉄も4月終了時点で首位に立ちましたけど、最初に良いスタートダッシュを切ったということが大きいですね。

――4月の段階でチームとしての戦い方、そして勝ち方を選手が把握したのは大きいでしょうね。

 そうですね。近鉄の時も開幕戦で5点差をひっくり返しての逆転勝ち(10対9で勝利)だった。この試合で「取られたら取り返す」、「打ち勝てる」というイメージを選手のみんなが持ちましたし、そのままの形で優勝することができた。もちろん当時の近鉄と今の楽天では選手の特徴、戦い方は違いますけど、4月が終わった段階のチームの雰囲気は似ている部分です。「僕たちもこんな感じだったな」と思わせる部分がありますね。4月はほぼ完璧、理想に近い戦いができたと思います。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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