オリックス新人・黒木優太が躍進中! 背番号「54」に込めた2つの意味
強気を貫きつつ内容を突き詰めていく
豪快な投球フォームが、強心臓ぶりを物語る 【写真=石井愛子】
――さて、開幕から間もなく1カ月が経とうとしています。自信になっている部分はありますか?
ありません(即答)。まだ自分の力を100パーセントの力を出し切れていない。それに、まだ数試合しか投げていませんし。ただ、気持ちで押せている面では、このスタイルでいけるという手応えは感じています。
――100パーセント出し切れていないというのは?
2ストライクに追い込んでから甘い変化球を投げてしまったり。配球の過程を大事にしないといけない所を簡単に行き過ぎて打たれたり。詰めの甘さがあるんです。その部分をなくしていければ、もっと良い結果につながると思うんです。
――それは自分自身で感じたことですか? それともコーチや先輩に言われたこと?
両方ですね。基本は自分で感じたことですけど、いろいろな意見をもらえる。「もっと違う攻めをしたほうがいい」とか。大学までとは違う意見が聞けるし、やっぱりプロの
視点は違う。配球面のことなので、あまり詳しくは言えないですけど、自分で感じたことに加えて、先輩のアドバイスを参考にしています。
――そうすると、現状では収穫よりも課題のほうが多い?
そうですね。でも、課題というより「楽しみな部分」という表現かな、と。年間を通してどれだけ自分がプロで通用するのか。どの時期に体がしんどくなるのか。それが把握できれば、来年に向けてキャンプでの走り込みなどの調整方法が変わってくる。今年も、もちろん大切ですけど、初めてのプロの世界で1年を通して何を感じられるか、本当に楽しみなんです。
「数字の目標は作らない」
ないです(即答)。数字の目標は作らないようにしているんです。だって数字に表れない失敗や良い部分もあるわけじゃないですか。そういう部分を大事にしていきたい。数字を求めても、得られるのは結果だけ。内容を突き詰めていきたいです。
――理想はあるのでしょうか?
うまく言えないんですけど、絶対的な変化球を2つ持ちたいんですよね。そのうえでピンチでも真っすぐで押していける投手。そして、負けない投手です。
――変化球を2つという意図は?
アメリカの投手を見ていて思ったんです。ドジャースの(クレイトン・)カーショー投手を見てもカーブ、スライダーを持っていて、真っすぐも速い。ストレートに加え1つの変化球だけなら、打者は2択に絞れる。それを3択にしたら幅が広がるし、打者も迷ってくれる。大学のときから、その考えはあります。
――現状はスライダー、カーブ、フォークの3球種です。その中で現時点で武器といえる2つの球種はありますか。
どれもまだ精度が低いので、武器とは言えません。大学のときは自信を持っていましたけど、プロの打者は振ってくれない。自分では良いと思っても簡単にファウルにされたり、見逃される。まだまだです。
――スライダーはタテ、ヨコ2種類を投げますが、タテのスライダーは大学1年時の日大戦で京田陽太選手(現中日)を相手にした場面で瞬時に習得したそうですね。
ヨコのスライダーを投げてもアイツ(京田)、ファウルばっかり打ってしつこいんですよ(笑)。それに、あのときの捕手が吉田裕太さん(現ロッテ)だったので、絶対に止めてくれると思ったので「タテに落としてやろう」と握りを変えてみたんです。そしたら空振りを取れて、そこから使い続けているんです。
――プロでもマウンドで何かを試しているのでしょうか?
もちろんありますよ。でも今は、まだ言えません。
――ドラフト指名時には「1位の選手には負けたくない」と言っていました。向上心の源は、その負けん気の強さと感じます。
それはありますね。だって、自分ずっと2位でしたもん。大学4年の春、秋のリーグ戦(東都二部)も2位。ドラフトも2位。1回も1位になっていないことが悔しくて。だから何かで1位になりたいんです。
――プロの世界で1位になる。
はい。誰にも負けたくありません。
――そんな負けん気にあふれる投球が黒木投手の最大の魅力です。
これからも、とにかく気持ちを前面に投げていきたいと思います。1球1球、1試合1試合に対して全力に。自分のそういう投球を見てもらえたらと思います。そして、少しでもチームに貢献できるように、1年間頑張るだけです。
(取材・構成:鶴田成秀)