「WBCの影響は外野のこじつけ」 不調の侍戦士たちを岩村明憲氏が分析

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本塁打0の筒香、昨年3・4月は8発

WBCでは侍の主軸として打率3割2分、3本塁打、8打点と、その実力を世界にアピールした筒香。ただ、現在は本塁打ゼロと結果が出ていない 【写真は共同】

 日本中の注目を集めた第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)から早1カ月。惜しくも準決勝で敗退した野球日本代表「侍ジャパン」だが、ファンを熱くしたメンバーがそれぞれのチームに戻り、3月31日に開幕したプロ野球を盛り上げている。

 その中でファンがどうしても心配してしまうのが、侍ジャパン中軸を担った横浜DeNA・筒香嘉智、東京ヤクルト・山田哲人、北海道日本ハム・中田翔の成績が上がってこないこと。

 昨年の3・4月成績を見ると、本塁打王を獲得した筒香は打率2割8分6厘、8本塁打、17打点、2年連続3割30本塁打30盗塁を達成した山田は打率3割4分、8本塁打、17打点、打点王の中田は打率2割8分、3本塁打、20打点だった。

 それに比べて、今年は筒香が打率2割4分3厘、0本塁打、6打点、山田は2本塁打を放っているとはいえ打率2割2分4厘、6打点。中田は23日に再登録されたが、右足太もも付け根の故障で登録を抹消され、そこまでの成績は打率2割、0本塁打、1打点だった(成績は4月24日現在)。

 ここまでの成績を見ていると、ファンとしてはWBCが影響しているのではないかとうがった見方をしてしまう。しかし、これを「WBCの影響があるというのははっきり言って外野のこじつけですね。やっている選手たちはまったくそういうことは考えていないと思います」と一笑に付すのは第1回、第2回WBCに出場、世界一に貢献した岩村明憲(福島ホープス監督兼選手)氏だ。

 岩村氏は第1回大会後はヤクルトに復帰し、4月成績は打率2割8分6厘、3本塁打、7打点。第2回大会後はメジャーリーグ・レイズに復帰して4月成績は打率2割9分5厘、7打点と大きな影響はなかった。当時の心境を「WBCの疲れはありませんでした。1年通してシーズンは長いので波は来ますから。早めにコンディションが100パーセントになっているので、シーズンには入りやすかったですが、いい波が早く来ただけだと思っていました」と語る。

必要なのは納得の一打

 では筒香、山田、中田についてはどう見ているのか。

「スイング自体は悪くないです。本人の中でタイミングがしっくり来ていないんだと思いますが、日本の投手は優秀な投手が多いので、調子が悪い時期にコントロール良く投げられると、手も足も出ない状況になりえることはあります」

 ただ、侍ジャパンのメンバーたちはWBCは日本のボールより飛ばないと言われるWBC球、さらに対戦相手も動くボールが多いという外国人投手を想定して、早い時期から選手たちは調整してきた。

 その影響に関しても岩村氏は「最近は日本球界でも外国人投手は多くなってきました。また日本の投手も意図的にボールを動かす投手が増えています。巨人の菅野(智之)投手もワンシームやカットボールを使います。それを考えると、WBCが大きく影響しているとは思っていません」ときっぱり否定する。

 その中で、筒香はチーム状況が上がっていない中、対戦投手は彼1人を抑えておけばと攻めが厳しくなっていくし、山田、中田に関してはケガ人が多いチーム状況も影響しているのでは、と語る。ヤクルトは畠山(和洋)がケガで離脱し、バレンティンがいるとはいえ、長距離砲に攻めが厳しくなるのは当然のこと。日本ハムでも大谷翔平、レアードと主力がケガで登録抹消する中で、「中田選手は責任感が強い選手ですから。自分がやらないといけないという責任感の中で自分のスイングができずにイライラしているところに強引に打ちにいって無理したのではないか」と気持ちを慮る。

 ただ、今後へ向けて心配は続く。復活に向けてのカギはどこにあるのだろうか?

「言葉で言うのは難しいですが、何かのきっかけなんですよね。ホームランでもヒットでも1本出るまでシーズン当初は不安があって、例え1本出たとしても、なんかたまたまっぽいなっていう気持ちが出る場合もある。それでは自信を持ってバットは振れないわけで、結果をほしがってメンタル的に弱気な部分が出てしまう……。そこで何でもいいけどボテボテの内野ゴロの当たりでも、それがヒットになったりすると、あの当たりでHマークついてくれたとか。同じ試合で今度ヒットが出たら、今日は1日2本ヒットが打てたよ、とか。そういうのが出れば次の試合がすごく楽になるというのはありますね。1本、自分の納得する打球が出れば、すっきりすると思います」

きっかけの一打の目撃者へ

「彼らの不調はたまたま悪い波がシーズンの最初に来ただけと考えていますね」と不調の要因をWBCとの関連性を最後まで強く否定した岩村氏。

「WBCを影響づけると、もう選手は出場しなくていいことになってしまいますから。せっかくあれだけ盛り上がった大会ですし、選手たちも大きな経験になりました。準決勝で負けたことで、今後の彼らにとって、また日本球界にとって大きく学べたことがあったはずです」

 そして2回出場したことで、自身も「WBCは大きな自信になりました。打席の中での何かが積み重なって、ああこういう感じでやれたらいいなとか、こういう感じでやったらできたなという小さい収穫ポイントがちりと積もって自信に変わったので、思い切りやれるようになりました」と、WBCでの効果を語る。

 侍戦士の実力を信じている岩村氏は、「復活はもうタイミングだと思っています。技術的にも、経験的にも今の不振を乗り越えられる選手たちですし、今までもそれを乗り越えてきたからこそ侍ジャパンに選出されています。攻めが厳しいのは主力選手たちの宿命ですから。何かきっかけがあれば一気に打ち始めると思っています。ファンの方たちは、シーズン終わったあとにあの1本が『復調のきっかけの一打だったんだ』と言えるように、きっかけの一打の目撃者になってほしいですね」と最後を締めた。
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