「東京五輪期待の星」が新エースへ名乗り フォーム改造で復活、自信を得た鈴木祐貴=バレー

田中夕子

新たなフォームで「見える景色が変わった」

長江コーチの提案により、フォームの改善に取り組んだ(写真は2014年) 【坂本清】

 U−23代表候補の合宿やこれまでの試合映像を分析し、全体練習後に長江コーチと、U−18女子日本代表を率いる三枝大地監督の3人で個別練習に励み、フォーム改善に取り組む。高校までのフォームに変えて、肘を後ろに引き、体のひねりを使ってボールに力を伝えるフォームを習得すべく、練習を重ねた。

 映像を見ながら、肘の角度や体の使い方など細かなアドバイスを受けながら取り組んだ結果、変化の兆しがあらわれたのは昨年末のインカレ後だったと鈴木は言う。

「コートの奥やストレート、ブロックアウトを狙った通りに取れるようになったし、フォームを変えてから打てるコースの幅が広くなりました。しっかりたたけている感覚もあって、それからは見える景色が変わりました」

 フォーム改造と並行して、東海大の学生トレーナーに指導を受けながらトレーニングにも力を入れた。「短距離や中距離を走るのは得意だけれど、全体的に弱い」と自身も揶揄(やゆ)するように、まだまだ体の線も細い。ただ重い器具を持って負荷をかけるのではなく、器具は軽くして回数を増やしたり、膝を曲げる角度を深くして負荷を高めることでけがをしない体を作り、筋量も増えた。

“憧れ”の選手たちを“ライバル”と呼べるように

鈴木はシニアの代表にも選出されている(写真は2015年) 【坂本清】

 その結果が春季リーグで「ズドン」と響くスパイクだ、と言うのは東海大を率いる小澤翔監督だ。

「もともと高い能力を持っていた選手でした。でもそこにプラスして一生懸命練習して、取り組んできたことが結果につながった。成長を遂げて、ようやく一歩を踏み出した。日本バレー界の未来も明るいと思います」

 今年2月に行われたU−23代表のキューバ遠征でも、「思っていたより出番もあって、ここに打てば決まるという手応えもつかめた」と語るように、自身の感覚だけでなく、試合での結果につながっていることも鈴木にとって大きな自信となっているのは間違いない。

「東京オリンピックは大きな目標です。石川さんや柳田(将洋)さんのように、高過ぎる存在がたくさんいるので、まだまだこれから。大学でも試合に出られるチャンスをもらえている以上、最大限に生かして、チャンスで相手ブロックを吹っ飛ばせるようなスパイクが決められる選手になりたいです」

 今はまだ“憧れ”の選手たちを“ライバル”と呼べるように。201センチの大器が、東京五輪のエースへ名乗りを上げる。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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