アヤックス、不屈の闘志が導いた逆転劇 「ゲルゼンキルヘンの奇跡」でEL4強
敗色濃厚から劇的な結末へ
延長戦でユネス(写真)がダメ押しゴール。アヤックスが2試合合計4−3でシャルケを退けEL準決勝に進出した 【写真:ロイター/アフロ】
アムステルダム・アレーナで行われた13日の第1レグは、アヤックスが攻守にシャルケを圧倒し2−0で先勝した。ハイプレッシングでボールを素早く回収し、縦に早く攻撃を仕掛けるダイナミックなアヤックスのサッカーに、第2レグ当日の『アルヘメーン・ダッハブラット』紙はELのトロフィーの写真とともに「今回がアヤックスのチャンス!」と優勝を期待する記事を掲載した。それだけ今のアヤックスはポテンシャルが高く、オランダ国内で高い期待を受けている。
だが、ゲルゼンキルヘンの第2レグはアヤックスにとって大変厳しいものとなった。53分にレオン・ゴレツカ、56分にはグイド・ブルグスタラーにゴールを決められて0−2。2試合合計のスコアは2−2となった。
シャルケペースで試合が進んだ80分には右サイドバック(SB)のジョエル・フェルトマンが退場して、アヤックスは10人に。101分にはダニエル・カリギウリのヘディングシュートで0−3(2試合合計2−3)と、アヤックスは敗色濃厚となってしまった。
しかし、アヤックスの不屈の闘志は消えなかった。延長後半直前の円陣でリスクをとって点を奪いにいくことを確認し合ったアヤックスは、左SBのニック・フィールヘーファーをまるでトップ下のようにプレーさせた。彼は110分に強烈なシュートでGKラルフ・フェールマンを脅かすと、その1分後にはクロスのこぼれ球をクリアしようとしたマティヤ・ナスタシッチに猛烈なチャージをかけてブロックし、貴重なゴールを奪った。
これで2試合合計3−3と両チームは並んだが、アウェーゴールの差でアヤックスがリードする形となり、今度はシャルケがリスクを冒す番となった。だが、アヤックスは敵陣に生まれた大きなスペースを突き続け、120分にアミン・ユネスがダメ押しのゴールを決め、2試合合計4−3とした。「ゲルゼンキルヘンの奇跡」と呼んでもいい劇的な結末に、試合後のアヤックスサポーターはボブ・マーリーの『スリー・リトル・バーズ』を合唱し、4強に進んだ余韻に浸っていた。
チームとして完成されている今季のアヤックス
アヤックスではベテランの部類に入るショーネは「チームとして成長し、力を合わせて戦うことができている」と語る 【Getty Images】
オランダのサッカーチームは選手の能力が高くても、あまりに若いのでチームとして“完成品”に仕上がらないことが多い。しかし、平均約22歳という若さで戦う今季のアヤックスは選手のポテンシャルの高さ、ビルドアップのうまさとフィニッシュへ持っていく技術とアイデア、ハイプレッシングをかけ続けるフィジカルに秀でており、シャルケとの第2レグのように今ひとつ、自分たちらしさを出せないゲームでも辛抱しながら試合をひっくり返す力がある。
また、選手層も厚く、途中交代で入ってきた選手がしっかりと自分の仕事をこなしている。だから、今季のELにおけるアヤックスは、久しぶりにチームとして完成されたように思えるのだ。
「若い選手が多いけれど、アヤックスは完成したのではないか?」という私の問いに、ラッセ・ショーネ(30歳)は同意してくれた。
「少しばかり歳をとった選手(ショーネ、ハイコ・ベステルマンら)もグループにいて、若い選手たちと良いミックスを作っている。若い選手たちはいっぱい試合に出て、たくさんの経験を積んだ。アヤックスはチームとして成長し、力を合わせて戦うことができている」