インディ500に挑む“新人”アロンソの勇気 今宮純のF1ザ・ショウダウン

F1速報

急きょF1モナコGPを欠場しインディ500に参戦することが決まったフェルナンド・アロンソ 【LAT】

 F1ジャーナリストの今宮純氏がさまざまな要素を「対決」させていく新企画。第1回はフェルナンド・アロンソとインディ500との「対決」に注目した。突如インディ500への参戦が決定したアロンソ、この挑戦は果たして無謀な試みなのだろうか? チーム体制、濃密な走行スケジュールを元に“ルーキー”アロンソの可能性を探る。

昨年の100回大会は大盛り上がり

 挑戦というよりも『冒険』だ――フェルナンド・アロンソの決意をそう受けとめたい。

「インディ500を見ずしてアメリカン・レーシングを語るなかれ」

 その格言を昨年、第100回記念レースで再びかみしめた。1986年に初めて訪れた後、ずっとF1モナコGPに出向いていたが、30年ぶりにインディ500に行き、新たな刺激を受けた。

 2007年までインディアナポリスで開催されたF1アメリカGPの数倍、いやそれ以上の賑わい。半年前にチケットは完全ソールドアウト。早朝から推定40万人が押し寄せる人の海のなかで、メガスケールなインディ500に溺れそうになった。

 第2期ホンダF1時代にゲルハルト・ベルガー担当として重責を担ったTエンジニアが、アメリカHPD(ホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント)で現場リーダーを務めている。夕飯を囲み旧交を温めた。

 アンドレッティ・チームが全精力をインディ500に注いでいること。マノーから転向の新人アレクサンダー・ロッシが第2戦のフェニックス・ショートオーバルですぐ順応性を示したこと。他にも貴重な話を聞いた。しかし、F1については口数が少なかった。彼と長谷川祐介ホンダF1総責任者は懇意の間柄、世界と戦う2人にはそれぞれプレッシャーがある――。
 昨年、第100回記念のインディ500にシボレー本社は必勝態勢できていた。ホンダの看板を背負う立場のTエンジニアには、第2期F1時代と同じ重圧がかかっていたのだ。店を出るとトニー・カナーン(チップ・ガナッシ・レーシングのドライバー)やボビー・レイホール(レイホール・レターマン・レーシングのオーナー)と遭遇、「ヤアヤア」と話しかけてきてインディ界の仲間たちはとてもフレンドリーだった。

 超高速戦に身をさらすリスクを共有しているからこそ、互いの心にリスペクトが芽生えるのだろう。いまは希薄になったがひと昔前のGPドライバーたちもそうだった。

 観衆すべて総立ち、200周目のチェッカーがガス欠状態のロッシに振られた。3時間00分02秒0872の結末はホンダの1−2、周りの席では「ロッシって誰? F1から来たルーキーか」と大騒ぎ。Tエンジニアから聞いていたことが目の前で現実になった。

 新人ロッシを引っ張り、背後で援護するなど皆でカバーしたアンドレッティ陣営のチームワーク。最後の燃費勝負で緻密な管理を遂行したHPDスタッフ、それらがルーキー優勝を叶えたのだ。レース後、Tエンジニアは「実はターン3ではもう一滴も残っていなかったんです」と、疲れきった表情に半分の笑顔で言った。

 今季のインディカー・シリーズ第3戦バーバー(23日)前にこれを書いているが、ホンダは戦前予想を覆し開幕2連勝スタート。最悪状況のF1とは真逆だ。この後29日に第4戦フェニックス(30日、F1ロシアGP)、5月13日に第5戦インディ・ロードコース(5月14日、F1スペインGP)、そして28日が第6戦インディ500だ(28日、F1モナコGP)。

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