低迷の前年王者・日本ハムを救うのは誰だ 故障者続出の中で奮闘する若き選手たち

ベースボール・タイムズ

ルーキー内野手は早くも貴重なピースに

シュアな打撃と堅実な守備でチームに貢献する石井一 【写真は共同】

 続いて“打”と“守”。これだけケガ人が出ているにもかかわらず、不幸中の幸いともいうべきか、チームの中核である二遊間コンビ、中島卓也と田中賢介の両選手は開幕からほとんどの試合に出場し続けている。

 だがその中で、二塁を守る田中賢は今季でプロ16年目。5月には36歳を迎えるベテランだ。慢性的に右肩の痛みも抱え、早くも2失策をするなど守備面での不安をのぞかせる。

 同時に「DH」は大谷の指定席であったため“積極的な休息”が取れずにいたが、今回、離脱した大谷に代わって田中賢がDHまたは一塁に入ることで、昨季の得点圏打率3割の打力は確保しつつ、後継者の育成も可能になった。

 そこに台頭してきたのがドラフト2位ルーキー・石井一成である。

 新人で唯一アリゾナキャンプのメンバーに抜てきされ、WBCで離脱した中田、レアードの代わりにオープン戦で出場機会を得て堅実な守備力と打撃力をアピール。開幕1軍の切符を手に入れた。

 もともと、守備力を評価されての抜てきだったが、開幕4戦目の千葉ロッテ戦でプロ入り初安打を放つと、翌5戦目には早くもスタメンを勝ち取り、今季のチーム初盗塁、そして自身プロ入り初のタイムリーも放った。

 そして14日の東北楽天戦では、12球団新人一番乗りでプロ初本塁打をマーク。早くも日本ハム打線の貴重なピースとなりつつある。

 この活躍の陰には、とある“先輩”の功績も大きい。それが楽天で活躍中の茂木栄五郎だ。

 石井にとっては早稲田大の1学年上にあたる茂木の活躍を目の当たりにし、「自分も頑張れば」とプロ入りを意識したという。その茂木が昨季、同僚の高梨と最後まで僅差の新人王争いを演じたことで、茂木の存在が自分の現在地と可能性を明確にさせた。

 そして、大学時代は遊撃手だったものの、プロ入り後は二塁手としての動きも飛躍的に向上。捕球後の素早い送球で、チームの目に見えない課題であった「田中賢の守備」を埋めて余りある働きを見せている。
 また、“守”の面でいえば、高卒3年目の捕手・清水優心の存在も興味深い。

 彼もまたWBCで大野奨太の不在をオープン戦からカバーしてきた一人だが、そこで養われた1軍での試合勘がリード面でも生かされ、ここまで10試合に出場(うちスタメン4試合)している。

 成長したリード面もさることながら、課題の打撃でも13日の福岡ソフトバンク戦でプロ初タイムリーを記録。「誰にも負けない」と自負していた強肩を武器に、新戦力としての大きな期待を背負っている。

人が育つのなら、前に進む感じがある

栗山監督は故障者続出の現状を若手の台頭で乗り切りたいと考えているようだ 【写真は共同】

 今季のカギを「去年と同じチームだったら連覇はあり得ない」とし、チームを一度壊す作業から着手した栗山英樹監督。昨季も「苦しい時にこそ知恵が生まれる」と、投手・大谷を1番に据えて先頭打者本塁打を導き、守護神の増井を先発に転向させて2ケタ勝利をマークさせるなど、数々の実績がある。

 それを根拠とするなら、ここまで今季唯一の連勝を記録した13日のソフトバンク戦のお立ち台に上述の石井一、清水、さらにその日に自身1軍初昇格初スタメンでプロ初安打を放った森本龍弥が上がった際、「人が育つのであれば、チーム状況が苦しくても前に進む感じがある」と話した栗山監督の言葉にも納得できる。

 山あり谷あり。シーズンは長く、険しい。満を持して主力が戻ってくるであろう初夏あたりが、連覇へ向けての“リ・スタート”のタイミングとなるか。

 一見、故障者続出の苦しいチーム状況も、「12球団で最も新戦力の台頭が著しい」とプラスに捉えるならば、“連覇への過程”として受け入れられるはず。そのためにも、若手たちが今のチャンスをしっかりと生かさなくてはならない。

(八幡淳/ベースボール・タイムズ)

2/2ページ

著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント