ファンディーナ「力負け」沈んだ皐月7着 池江師の発想超えた!アルアイン混戦に断
平成生まれのGIジョッキー、待望の誕生
「中間の調教でも良い動きをしていましたし、今年はどの馬が勝ってもおかしくない。アルアインも十分やれると思っていました」
平成生まれでは初のJRA・GIジョッキーとなった 【写真:中原義史】
「これまでもチャンスのある馬に乗せていただいていたのに、なかなか勝てませんでした。だから信じられなかったですし、本当に勝ったのかな?って。みんなから『おめでとう』と声を掛けられて、GI勝利を実感しています。やったんだな……って」
噛み締めるように話す松山の表情が、この勝利の喜びの大きさを物語っている。レース振りも、「人間が必死になりすぎて最後にヨレてしまったのが悔いが残ります」と本人は辛口ジャッジなのだが、この大混戦を一刀両断する見事な腕達者ぶりだったと思う。
3コーナーの“死んだフリ”が勝因!?
「ファンディーナを先に行かせようという意識ではなくて、3コーナーから馬場が悪くてモタついてしまったんです。でも、それが良い面に出たかなと思います。ファンディーナが外に行ったので、その内を狙う形で。直線に向いたらまた伸びてくれました」
最後まで止まらない持続力のある末脚がアルアインの大きな武器だ 【写真:中原義史】
「追ったらしっかり伸びてくれますし、持久力が優れているんです。最後の粘りが魅力ですね」
思い返せば前走の毎日杯でも、僚馬サトノアーサーの猛追をしぶとく振り切ってのゴールだった。これまでマイル戦を中心に使われてきたように、池江調教師はマイラーとしての資質を見込んでいたが、どうやらアルアインはマイルにカテゴリーのとどまる器ではなさそう。トレーナーもすでに考えを改めている。
「これは、僕の発想の乏しさでもあるんですが、母系や体型からマイルにこだわりすぎていました。毎日杯の後には2000メートルなら十分行けると思いましたし、そうした僕の発想を打ち破ってくれる馬でしたね」
池江軍団、ダービーは3頭出しで
松山が「距離は問題ない」と太鼓判、ダービーでも主役を狙う 【写真:中原義史】
「ダービーは“3段重ね”ぐらいで行きたいですね(笑)」
3段重ねとはつまり、ワンツースリーフィニッシュのことを差すのだけど、池江調教師のこの言葉がまるっきり冗談に聞こえないぐらい、ダービーに向けて池江軍団の層が分厚くなったのは事実。松山もこれを援護射撃するかのように「折り合いは問題ないので、距離は全然心配していません。今のところ注文はないですし、ダービーも問題ありません」と力強く言い切っている。
大混戦の2017年牡馬クラシックロードは、この皐月賞をターニングポイントに池江厩舎が独占してしまうのか――いや、5着に敗れた関東の1番手レイデオロも休み明け初戦ながら最後は鋭く追い上げており、鞍上のルメールは「最後に良い脚で伸びてくれた。次は状態がもっと良くなると思うし、東京の長い直線。チャンスあるかもしれいよ」と逆襲を予告している。3つのトライアルが控えていることを考慮しても、まだまだ勢力図は安定しないだろう。
ちなみに、この皐月賞の3連単の配当は106万4360円。的中したうらやましい方、いますか?
ダービーでも大ホームランを狙って夢の穴馬探しに奔走するか、それとも混戦だからこそ手堅いミートを心がけていくか――“自分だけのダービー馬”を探すこの1カ月は、競馬ファンにとって何よりも楽しい1カ月だ。
(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)