選抜出場校の対外試合に検討の余地あり 高校野球、次の100年への提案(3)

松倉雄太

センバツ開幕前日・3月18日に行われた開会式リハーサル。この日から出場校は大会以外での対外試合は禁止される 【写真は共同】

 大阪勢対決となった履正社との決勝を制し、大阪桐蔭の優勝で幕を閉じた今年のセンバツ。大会全体を通して見ると、今後の高校野球を考える上でさまざまな課題が見えた。次の100年へ向けた提案なども交えながら考えていきたい。第3回は大会前の対外試合について、取り上げる。

解禁日から選抜本番までわずか9日のみ

 今大会、東北地区の2校のエースが肩や肘に痛みを感じた状態で甲子園入りした。ともに2月から3月の練習で少し投げ込んだ後に違和感を覚え、3月8日の対外試合(練習試合)解禁日の後に痛みへと変わったという。

 高校野球では前年の12月1日から3月7日まで対外試合ができないことになっている。さらにセンバツ出場校の対外試合について、大会要項で以下のように書かれている。

13.選抜校
(前略)練習試合は解禁日となる3月8日(水)から17日(金)まで行えるが、出場校(補欠校を含む)同士の試合は大会終了までできない。また、出場校は18日(土)以降、大会行事を終え自校に帰るまで(途中での試合を含む)はできない。帰校した翌日以降は差支えない。なお、補欠校の練習試合は、18日(土)以降も引き続き可能。
 今回のセンバツは大会開幕が3月19日と近年では最も早かった。逆に対外試合解禁日は8日で固定されたままである。8日から開会式リハーサル前日の17日までの9日間で早く仕上げたい出場校。その中で肩や肘を痛めた投手は『解禁日に投げられる状態にしたい』という焦りもあったように感じられる。

 今年は平日でもあった対外試合解禁日。果たしてこのままで良いのだろうか。

3月という時期ゆえの難しさも

 解決案としてまず考えられるのが、『解禁日を早くする』こと。

 しかし、竹中事務局長は「寒冷地と温暖な地域の差」を難しさとして挙げる。実際に東北や北海道の多くのチームは解禁日に地元で試合をするケースは少ない。試合をするとしたら、できる地域に遠征へ行った場合である。今年のセンバツに出場した寒冷地のチームも、四国などに遠征をして試合を行った。

 もう一つ、3月8日に試合ができる状態のチームがどれだけあるのかも課題だ。

 センバツとほぼ同時に春季大会が開幕する沖縄、九州、四国、東京などのチームはそれに合わせて練習をしているため、仕上がりが早く、比較的試合ができる状況にある。しかし、4月以降に春季大会が始まる地区では、3月前半はまだ本格的に試合ができる状態になっていないことが多い。

 3月にセンバツ出場校と試合をしたあるチームの監督は「この時期、練習試合でダブルヘッダーをやると、2試合目は(使える)投手がいなくなる」と苦しい事情を話していた。大会が1カ月近く先にある以上、特に投手には無理をさせられない。短いイニングでつないでいくと、ダブルヘッダーの2試合目まで持たないというわけである。

 さらに公立校の指導者数人に話を聞くと、「まずは学年末試験。甲子園に出られる場合はある程度、学校側が配慮してくれることもあります。でも本来は試験期間中には練習ができない。練習ができてない状態で解禁日からすぐに試合をすると、それこそケガをする、させてしまうという危険がある。だから、センバツに出場するチームとは組みにくいんです。もう一つ、3月は採点や入学試験など学校行事で指導者が練習に出られない日もあり、自主練習で終わることもあります」と、3月という時期の難しさを感じる現場の声を明かしてくれた。

 センバツ直前の17日に出場校と対戦したチームは、監督が学校での職務の事情でチームに帯同できなかった。代わりにチームを率いて指揮を執った責任教師は、「ウチはまだ学校があるので、今日が2試合目。明日からの連休でようやく本格的に試合という感じですね」と話していた。

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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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