タイブレークが決着の最適解なのか 高校野球、次の100年への提案(2)

松倉雄太

タイブレークとサスペンデッド

2014年の高校軟式野球選手権大会、中京(岐阜)と崇徳(広島)の準決勝は3度のサスペンデッドを経て、延長50回にわたる激闘となった 【写真は共同】

 延長での決着方法の一つとして、無死一、二塁の状況からスタートするタイブレークが、現在継続審議となっている。竹中事務局長は、「今は意見を集約している段階。今回引き分け再試合を経験した4チームからも話を聞きたい」と話した。

 ただ、タイブレークは決着をつけやすくする制度ではあるものの、完全なものとは言い難い。実際に社会人野球などではタイブレークに突入してもなかなか決着がつかないことが見られる。そうなれば、選手の体を考える主催者側の意図とはズレが出てしまうように思える。

 もう一つの対案として考えられるのがサスペンデッドゲーム(一時停止試合)だ。2014年の軟式選手権準決勝(崇徳対中京)の延長50回ではこれが適用された。

 だが、後に高校野球の指導者の何人かに話を伺った時、デメリットを指摘する声があった。交代した選手が翌日は何もできないからだ。

 仮に交代選手を使い切った状態で、サスペンデッドになったとする。次の日に試合出場可能な9人の誰かが体調を崩したりすると、それだけで棄権になってしまう。一夜明けて試合をするということはその可能性もある。

 逆に再試合ならば一からオーダーを決めるので、誰かが出られないとしても、代わりの選手が出場できる。軟式での延長50回の後、高校野球特別規則でサスペンデッドを適用しないことが明記された。

『引き分け抽選』の採用はどうか

 ではタイブレーク以外の決着方法として何ができるのか。

 提案として、『引き分け抽選』を挙げたい。

 高校野球特別規則には引き分け抽選制度の採用も明記されている。現在はタイブレーク同様、春の地区大会や都道府県大会で主催連盟が大会前に参加校に周知した上で採用することが可能というものだ。

 両チームの主将だけがクジを引くラグビーの引き分け抽選とは違い、野球は最終回に出場していた9人ずつ(両チーム合わせて18人)が1枚の当たりをめぐって抽選する。延長自体は規定回数で確実に終了するので、タイブレークが長いイニングになるよりは確実に選手の体の負担は軽くなる。

 この引き分け抽選制度を採用したとして、指導者の間で危惧されるデメリットは選手の気持ちだ。

 指導者からは「選手にどう話したらいいのか」という声も聞いた。ただ、選手の体と気持ちを天秤にかけた時、どちらが大事になるのか。悩ましい問題ではあるが、勝ち負けではなくあくまでも“引き分け”ということを明確にした上で、考えていっても良いのではないか。

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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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