タイブレークが決着の最適解なのか 高校野球、次の100年への提案(2)

松倉雄太

延長再試合を戦った健大高崎と福井工大福井ナイン 【写真は共同】

 大阪勢対決となった履正社との決勝を制し、大阪桐蔭の優勝で幕を閉じた今年のセンバツ。大会全体を通して見ると、今後の高校野球を考える上でさまざまな課題が見えた。次の100年へ向けた提案なども交えながら考えていきたい。第2回は延長再試合に端を発するゲームの決着方法について、取り上げる。

2度の日程延長で休養日が消滅

 3月26日、センバツ大会7日目。第2試合の福岡大大濠(福岡)vs.滋賀学園(滋賀)は両チームとも譲らず、延長15回引き分け再試合になった。主催者は再試合を2回戦最終日となる8日目第4試合に組み込むことを発表した。

 第2試合終了から4時間18分後の18時24分。なんと第3試合の健大高崎(群馬)対福井工大福井(福井)も延長15回で決着がつかなかった。春夏の甲子園大会で史上初の2試合連続引き分け再試合となってしまったのである。

 2回戦は残り5試合。これを1日で消化するには早朝から夜までかかるため、実質不可能。主催者は一度発表した日程を組み変え、8日目は当初予定されていた2回戦3試合を行い、再試合となった2試合を9日目に組むことを決めた。「再試合となった4チームに1日の休息を」という主催者の迅速な判断は大いに讃えたい。しかし、その代わりに準々決勝翌日に予定されていた休養日は消滅することとなった。

 センバツの大会要項の中にこんな箇所がある。

19.試合方法
トーナメント方式で行う。準々決勝4試合は1日で実施するが、翌日は休養日とする。ただし準々決勝までに雨天などで2日以上日程が延長された場合は準々決勝翌日に準決勝を行う。
 今大会は3月21日に雨で試合を順延していた。これにより、引き分け再試合による2度目の日程延長が、大会要項にある休養日の扱いに引っかかってしまったのだ。ちなみに夏の選手権大会は準々決勝までに雨天などで3日以上日程が延長された場合に休養日が消滅することになっている。

 2試合連続の引き分け再試合の後、日本高校野球連盟の竹中雅彦事務局長は取材に応じ、「選手の体を考え、延長15回で引き分け、再試合とする大会規定があります。それが2試合連続で起こった。1日で再試合が2つというのはレアなケース」と語った。

連続再試合に「若干の戸惑い」

 地方大会を含め、過去の夏の大会で同一チーム同士が2試合続けて延長15回引き分け再試合を演じたことはあるが、甲子園大会では初めてのこと。

 これまでにも起こり得る可能性はあったものの、「若干の戸惑いはある」と想定までは出来ていなかったことを竹中事務局長は明かす。その上で、「今回こういうケースが起こった。大会運営委員会で(来年度以降は)雨天などと記した大会要項の『など』を省いて、雨天だけにするとかを検討していきたい」と、早急に考えていかなければいけない課題であることを語った。

 雨天だけに限定すれば、休養日は残る。試合数が増えているのに、日程もきつくなるということが抑えられる。

 今回のケースでは、福岡大大濠、滋賀学園、健大高崎、福井工大福井の4チームは決勝まで勝ち上がれば4連戦になる可能性があった。さらに確率は低いが、引き分け再試合を2回、3回と重ねることも0パーセントではない。大会が永遠に終わらない可能性がある、とあらためて感じさせられた。まずはこの課題をどう解消していくか。推移を見守りたい。

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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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