マーリンズ首脳陣が田沢に期待する役割 新天地での初登板は苦しいピッチングも…

丹羽政善

ナショナルズとの開幕戦で1死も取れずに降板した田沢(左端) 【写真は共同】

 4月3日(現地時間)の開幕戦。ナショナルズ戦の8回からマウンドに上がった田沢純一は、開幕戦独特の緊張感もあってか制球が定まらず、四球、四球、右前打で1点を失うと、1死も取れずに交代を告げられた。

「(ブルペンでは)悪くなかったんですけど、それをマウンドで出せなかった」

 7回に1点を勝ち越され、絶対に追加点を与えられない展開。アダム・イートン、ブライス・ハーパー、ダニエル・マーフィーと左打者が続く場面で、あえての起用でもあったが結果を残せず、田沢は「すべて、僕が悪い」とうなだれた。

 ただおそらく、これからも左が続く終盤で田沢は起用されるはず。“あえて”の裏には、こんなマーリンズのブルペン事情がある。

リリーフ左腕がいないマーリンズ

 マーリンズは今年、開幕ロースターに8人のリリーフ投手を登録したが、左は1人もいない。先発にはチェン・ウェインとアダム・コンリーの2人がいるが、7日と8日のメッツ戦にそれぞれ先発したので、オープニングシリーズの相手だったナショナルズは、一度もマーリンズの左投手と対戦しなかったことになる。

 左投手をベンチに置かないマーリンズの考えはこうだ。

 昨年までマイク・ダン(現ロッキーズ)という左腕がいた。2016年までの過去3年、対左打者との被打率は2割3分9厘。対してマーリンズのリリーフ陣の左打者に対する被打率(過去3年)はデービッド・フェルプスが2割4分5厘、田沢が2割5分1厘、ブラッド・ジーグラーが2割2分5厘、カイル・ベアラクラは15年のメジャー昇格後の2年で1割8分6厘。よって、左打者にめっぽう強い投手を獲得できるなら話は別だが、ダンの穴を埋めるのはさほど難しくなく、それならばワンポイントではなく1イニングを投げられる投手をそろえた方がいい――となった。

 そもそも、左対左のマッチアップにおいて左投手が有利というのは、過剰評価されているとマーリンズの首脳陣は捉えている。その彼らが、左投手に対して昨年までの通算で3割2分8厘と対右投手(3割6厘)よりも高い打率を残しているイチローを左投手がマウンドにいるときは代打で起用しないこととは矛盾もあるが、そうした一方で、開幕戦でフェルプスから逆転2ランを放ったアダム・リンド(ナショナルズ)のように、右投手にめっぽう強く左投手にからっきしダメ、という選手がいるのも事実だ。

 過去3年、彼の右投手との対戦打率は2割8分9厘(1006打数291安打)、45本塁打、170打点なのに対し、対左投手となると1割9分8厘(187打数37安打)、1本塁打、15打点と極端に低くなり、マリナーズにいた昨年も対右投手との対戦成績は打率こそ2割3分9厘と低かったが、351打数で19本塁打を放っており、左の代打の切り札として存在感を発揮していた。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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