マーリンズ首脳陣が田沢に期待する役割 新天地での初登板は苦しいピッチングも…
ナショナルズとの開幕戦で1死も取れずに降板した田沢(左端) 【写真は共同】
「(ブルペンでは)悪くなかったんですけど、それをマウンドで出せなかった」
7回に1点を勝ち越され、絶対に追加点を与えられない展開。アダム・イートン、ブライス・ハーパー、ダニエル・マーフィーと左打者が続く場面で、あえての起用でもあったが結果を残せず、田沢は「すべて、僕が悪い」とうなだれた。
ただおそらく、これからも左が続く終盤で田沢は起用されるはず。“あえて”の裏には、こんなマーリンズのブルペン事情がある。
リリーフ左腕がいないマーリンズ
左投手をベンチに置かないマーリンズの考えはこうだ。
昨年までマイク・ダン(現ロッキーズ)という左腕がいた。2016年までの過去3年、対左打者との被打率は2割3分9厘。対してマーリンズのリリーフ陣の左打者に対する被打率(過去3年)はデービッド・フェルプスが2割4分5厘、田沢が2割5分1厘、ブラッド・ジーグラーが2割2分5厘、カイル・ベアラクラは15年のメジャー昇格後の2年で1割8分6厘。よって、左打者にめっぽう強い投手を獲得できるなら話は別だが、ダンの穴を埋めるのはさほど難しくなく、それならばワンポイントではなく1イニングを投げられる投手をそろえた方がいい――となった。
そもそも、左対左のマッチアップにおいて左投手が有利というのは、過剰評価されているとマーリンズの首脳陣は捉えている。その彼らが、左投手に対して昨年までの通算で3割2分8厘と対右投手(3割6厘)よりも高い打率を残しているイチローを左投手がマウンドにいるときは代打で起用しないこととは矛盾もあるが、そうした一方で、開幕戦でフェルプスから逆転2ランを放ったアダム・リンド(ナショナルズ)のように、右投手にめっぽう強く左投手にからっきしダメ、という選手がいるのも事実だ。
過去3年、彼の右投手との対戦打率は2割8分9厘(1006打数291安打)、45本塁打、170打点なのに対し、対左投手となると1割9分8厘(187打数37安打)、1本塁打、15打点と極端に低くなり、マリナーズにいた昨年も対右投手との対戦成績は打率こそ2割3分9厘と低かったが、351打数で19本塁打を放っており、左の代打の切り札として存在感を発揮していた。