イチロー、メジャー17年目の起用法 開幕戦出番なしも変わらぬ準備

丹羽政善

チームメートの度肝抜くフリー打撃

メジャー17年目の開幕を迎えたイチロー 【写真は共同】

 4月3日(現地時間)の開幕当日、マーリンズのクラブハウスが開いたのは、9時45分のこと。少し遅れて中に入ったとき、選手の数はまばらでイチローの姿もない。荷物はロッカーにあるので、となると、この時間は室内ケージかトレーニングか。案の定、しばらくして戻って来たイチローは、額にうっすらと汗をかき、一度体を動かしてきたようだった。

 チームは10時半過ぎからグラウンドでストレッチ。続けて打撃練習を行い、3組目のイチローは最初、軽くスイングしながら左方向へ合わせていたが、わざと詰まらせてレフト前に落とすなど1球1球に意図が透け、徐々にフルスイングを始めると、最後はライトの二階席に豪快に叩き込んで締め、チームメートの度肝を抜いた。

首脳陣の望む展開も救援陣に誤算…

 メジャー17度目の開幕。舞台は米国の首都ワシントンD.C.、ナショナルズ・パーク。この時期にしては珍しく気温が20度近くまで上がり、陽気に恵まれた。 

 9時半過ぎに発表になったスタメンにイチローの名前はなく、これで2014年から4年連続。マーリンズにとってはしかし、理想的なスタートか。このチームの中心は外野のレギュラー3人であり、イチローがスタメンに入るようでは故障者がいるということになる。マーリンズはマーティン・プラドが故障者リストで開幕を迎えたものの、ほぼベストメンバーで開幕に臨むことができた。

 試合もマーリンズが優位に進め、望んだ形――ブルペン勝負に持ち込んだが、意外にもリリーフ陣が誤算となった。

 マーリンズは昨オフ、田沢純一、ブラッド・ジーグラーと契約し、セットアッパーを補強。デービッド・フェルプス、カイル・ベアラクラと合わせた4人に加え、守護神に昨季40セーブをマークしたA.J.ラモスが控える布陣は、大リーグでも質、量ともに屈指と見られたが、この日は、フェルプスと田沢が期待に応えられなかった。

 6回から登板したフェルプスは、ブライス・ハーパーにソロ本塁打を浴び、続投した7回には、アダム・リンドに2ランを打たれて逆転を許す。8回から登板した田沢は、左打者3人と対戦すると、1死も取れず、追加点を献上。実績のあるリリーフを揃えながら、左投手がいない弱みを露呈してしまった。

 そしてこの試合では、フェルプスの続投が、少なからずイチローに影響を与え、開幕戦での出番が消滅している。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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