大宮がアジア戦略で目指す新たなクラブ像 育成を武器に、未来を描く2人の仕掛け人
大宮の描くアジア戦略とは?
育成年代でアブダビに遠征するなど、大宮は独自のアジア戦略を行っている 【写真提供:大宮アルディージャ】
J1に所属する大宮アルディージャの事業本部グローバル推進担当を務める秋元利幸さんは語る。
「ここまで3年間、育成普及本部でアジアの子供たちに『笑顔を届けたい』という一心で、がむしゃらに活動していました。事業本部に異動し、今、まさにクラブ全体としてのアジア戦略を描こうとしているところです」
その中で、国際交流をテーマに進めて来たアジア戦略と、地道に整備を続けて来た若手選手の育成が少しずつ交わり始め、新たな可能性が生まれようとしている。
秋元さんの思いが実ったアブダビ遠征
アブダビからU−17の選手らを受け入れた時の様子 【写真提供:大宮アルディージャ】
突破口を切り開いたのは、秋元さんだった。紹介してもらった方との他愛のない会話から、話が広がっていったという。「私は、アジアでの活動を担当しています。ラオスでは首相をはじめ、さまざまな要人や関係者に会うことができましたし、当国の東京五輪世代の代表強化にクラブで携わらせてもらっています。いつかの日かアルディージャならぬ『ラオディージャ』を現地で作りたいなと思って活動しています」と冗談半分、本気半分で自己紹介した。すると、経済産業省でエネルギー庁の担当をしている人物が「良いですね。私は、アブダビとの仕事をしているんですけれど、サッカーは可能性があるかもしれない! 是非お話を聞かせて下さい!」と返してきた。
アブダビ遠征実現に向け、突破口を切り開いたのは秋元さんだった 【平野貴也】
当地のスポーツ庁担当者との会談では、「アルディージャって何? と言われてしまいました。ACL(AFCチャンピオンズリーグ)に出たこともないので仕方がありませんが……。さらに(同じさいたま市を拠点とする)浦和レッズなら知っているけれどと言われてしまい……。また、われわれのここまでの活動の話をきっかけに、何かできることはないかと探ったのですが、『日本の育成システムに興味はあるけれど、どこであろうと1つのクラブと提携するつもりはない』と言われてしまいました」(秋元さん)と苦い思いを味わった。
だが、諦めきれずに帰国後もJリーグへ相談していると、興味を示した国際部部長(当時)の山下修作さんが、すぐにアクションを起こし、JICEとともにアブダビへ飛び、国際交流プログラムの話をまとめてきたという。話を持ち込んできた大宮も事業を担当することになり、先述の交流が実現した。