ハイレベルな投打を見せつけた作新学院 史上5校目の「夏春連覇」に好発進

楊順行

夏春連覇を狙う作新学院が48年ぶり出場の帝京第五に大勝を収めた 【写真は共同】

「試合の入り方に気を配りましたが、選手たちが思った以上に準備をしてくれ、初回2死から3点取れたのが大きいと思います」

 小針崇宏監督は、そう振り返る。48年ぶり出場の帝京第五(愛媛)に9対1。昨夏優勝の作新学院(栃木)が、史上5校目の夏春連覇に好発進だ。

 試合前。「帝京(東京)のコーチ時代は多少連絡を取らせていただいたこともありますが、帝京第五の小林(昭則)監督は大先輩。プロまで経験された方ですから……」と、1985年センバツ準優勝投手にしてプロ野球・ロッテでもプレー、小針監督にとっては筑波大の先輩にあたる小林監督に敬意を表した。

 だが始まってみれば、初回に2死走者なしから四球と3連打で3点を先制。以後も着々と加点し、投げては先発の大関秀太郎が7回を5安打無失点。投手も含めたディフェンスと、ヒットの出た5イニングのうち4回得点に結びつける、切れ目のないオフェンスがかみ合っての快勝だった。

ベンチ外の昨夏、今井達也と話したこと

先発の大関は前エース・今井直伝のチェンジアップを封印も、7回無失点の好投 【写真は共同】

 まずは、ディフェンス面。

 エース左腕・大関秀太郎は昨秋、県大会準々決勝から関東大会決勝までを一人で投げ抜き、最多失点が1。関東大会3試合はいずれも1失点で、通算の防御率1.02と抜群の安定感だった。ストレートは130キロ台中盤だが、スライダー、チェンジアップを駆使して打たせて取るのが持ち味だ。

 ことに、チェンジアップを習得したのが大きい。前エース・今井達也(現埼玉西武)から、「左投手は球種が多くないと打ち取れない」と助言を受け、2年時から練習してきた球。

 秋の栃木大会準々決勝から、実戦で投げ始めた。昨夏、栃木大会ではベンチ入りしたものの、「ストライクを取ることで精いっぱい」(小針監督)の状態で、甲子園ではベンチから外れた。ただ実はこれ、優勝投手・今井の2年時と同じパターンだ。

「昨夏、ベンチからは外れましたが甲子園に帯同して、今井さんと話をさせてもらう機会が増えました。印象的だったのは、“ピッチャーは、一人で練習しなければいけない”ということ。冬、一人でどれだけ耐えて練習するかで、花が開く」

 この日、抜け球が多かった今井直伝のチェンジアップは封印しても、ストレートとスライダーを中心に、まずは白星発進という花を咲かせたわけだ。

 さらには、主将の添田真聖。2回、2死二塁のピンチに、堀内大暉の痛烈なライナーをダイビングキャッチし、失点を防いだ。ビデオで相手を周到に研究し、キャンバス寄りにポジショニングしていたのが、小針監督の言う準備のひとつだろう。このスーパーキャッチには本人も、「完璧でした」と胸を張る。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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