侍が予想以上に見せつけられた力の差 実績十分のアメリカ投手陣に沈黙

杉浦大介

無安打の中田は素直に脱帽

中田は「メジャーのピッチャーは素直に凄い」と脱帽 【写真は共同】

 ただ……、ゲーム全体を改めて振り返ると、内野手の細かなプレーを指摘するより、やはりまずはアメリカの7投手の投球を褒めるべきではないか。力のあるアメリカ打線を相手に、1得点で勝とうなどと考えるべきではない。そして、散発4安打とこの日の日本はとにかく打てなかった。

 先発のタナー・ロアークから、ネイト・ジョーンズ、アンドリュー・ミラー、サム・ダイソン、ニシェク、ルーク・グレガーソンまで、準決勝に登板した7人はそれぞれメジャーで実績を積んできた投手ばかり。所属するチームから球数、イニングなどの制約を課されていることを考えれば、アメリカにとっての“総力戦”と呼ぶのはためらわれる。例えそうだとしても、彼らが短いイニングで持てる力を発揮した上での勝利だったことに変わりはない。

「(メジャーの力を)一番感じたのは動くボール。正直あそこまで動くボールを投げるピッチャーは日本にいないですから、そこに手こずったというのがある。それほどの速さを感じなくても、ツーシームで差し込まれてしまう状態が続いた。さすがと言ったらおかしいですけど、メジャーのピッチャーは素直に凄いなと」

 試合後、4打数無安打1三振に終わった中田翔は素直に相手の力を認めた。

打線を封じられれば必然の結果

 多くの投手が90マイル台後半(150キロ後半)のツーシーム、それぞれの決め球を持ち、そのムーブメントは日本の打者を悩ませ続けた。攻めあぐねたのはアメリカも同じでも、日本の打球の力のなさは際立った。菊池の1発以外、正直、日本打線から得点の予感はほとんど感じられなかった。

 冒頭で述べた通り、ついに訪れた8回のチャンスでも、ここまで6連勝の立役者の1人になった筒香が沈黙。期待を持たせた4番打者の打球が力なくライトのグラブに収まった瞬間、日本の第4回WBCは終わった。

「あれだけの選手たちがなかなか芯で捉えることができない。普段からそういうボールに対してプレーをしているわけではない。メジャークラスの動くボールへの対処には難しさを感じました」

 小久保監督のそんな言葉には、隠しきれない無念とともに、相手投手から力の差を見せつけられたことへの諦観も感じられた。試合自体は紙一重でも、投打の勝負ではおそらく力負け。それゆえ、例え1点差ではあっても、この日の日本の敗北はやはり順当な結果だったように思えてくるのである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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