2大会連続決勝へ導いた鉄壁の守備 プエルトリコの新時代到来は近い!?

杉浦大介
 延長11回以降は無死一、二塁から始まるタイブレーク――。MLBのシーズン中に導入されるべきとは思わないが、こんな風変わりな特別ルールが楽しめるのも4年に1度のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の醍醐味なのだろう。

 打者だけでなく、作戦を指示する監督、守る守備陣にも普段以上のプレッシャーがかかる。敗退と背中合わせの強烈な重圧の中で、この日に最高の結果を出したのはプエルトリコの方だった。

 3月20日(現地時間)、ロサンゼルスのドジャー・スタジアムで行われたプエルトリコ対オランダのWBC準決勝。3対3と譲らぬまま延長戦に突入すると、11回裏にプエルトリコはヤディア・モリーナの犠牲バント、ハビアー・バエスの敬遠四球でお膳立て。最後は1死満塁からエディ・ロサリオがセンターへ犠牲フライを放ち、歓喜のサヨナラ勝ちで2大会連続での決勝進出を決めた。

終盤に併殺を立て続けに完成

「今夜は素晴らしいゲームだった。両チームが良いプレーをして、ディフェンス面でプレーを遂行できたおかげで勝ち切れた。基本的なことができたのは重要だった。3、4つのダブルプレーを決める(実際には4併殺)ことができた」

 試合後、エドウィン・ロドリゲス監督は感無量の表情でそう振り返った。そんな言葉が示す通り、最も重要だったのは11回裏の攻撃ではなく、そこに至るまでの守備の方だったのだろう。

 先発投手のホルヘ・ロペスは立ち上がりに明らかに浮き足立っていたが、捕手のモリーナが初回に2人の走者を刺殺して大量失点を許さなかった。7、8、9回には3イニング連続で内野陣が見事なダブルプレーを決め、相手の得点機を未然に防いだ。そして、緊張感で凍りつくようなタイブレークの11回には、抑えのエドウィン・ディアスが1死満塁から二塁ゴロを打たせて、ダブルプレーを完成。ここで得点を許さなかったことが、同じく無死一、二塁からスタートする裏の攻撃の勢いにつながったことは言うまでもあるまい。

 モリーナ、カルロス・ベルトランという重鎮を支柱に、フランシスコ・リンドア、カルロス・コレア、バエスといったフレッシュな若手が脇を固めるスター軍団。1、2次ラウンドではチーム打率3割3分と今大会のプエルトリコは猛打を奮ってきたが、パワフルな打撃だけで勝ってきたわけではない。

「彼らはすごいプレーをした。ディフェンスは素晴らしかった」

 準決勝後、オランダのヘンスリー・ミューレン監督はそう舌を巻いたが、実際にコレア三塁手、リンドア遊撃手、バエス二塁手はいずれも本来はショートストップを務められるほどの名手たちである。要の捕手にはもちろんモリーナが君臨。外野にもレイモンド・フエンテス、ロサリオと人材がそろっており、プエルトリコの守備力は紛れもなく今大会最高級だろう。

 正直、投手陣はやや力不足にも思えるが、それでも勝ってこられたのは背後のサポートがあったから。モリーナの存在感だけでなく、身体能力と度胸の良さを兼備したバエスを中心とする内野陣が投手たちの精神面に及ぼす影響は計り知れない。

「Defense wins the championship(ディフェンスの良いものが頂点に立つ)」

 スポーツの世界全般に通じるそんな格言は、舞台が大きくなればなるほど余計に意味深くなる。それがWBCの戦いにも当てはまることを、極めて分かりやすい形で示したのが今夜の準決勝の終盤だったのだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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