イチロー、ケガの回復具合は……接触でのスロー調整は結果オーライ!?

丹羽政善

ケガらしいケガがないイチロー

2月下旬のスプリングトレーニング中の守備練習で同僚のバーンズと接触したイチロー。その後の回復具合と2017年シーズンに向けての仕上がりは!? 【写真は共同】

 マーリンズのイチローがキャンプを張るフロリダ州ジュピターを離れ、岩隈久志(マリナーズ)、ダルビッシュ有(レンジャーズ)らが調整を行っているアリゾナ州へ移動したのが2月28日(現地時間)のこと。翌朝、挨拶がてらマリナーズに顔を出して広報の部屋へ行くと、「イチローは、元気だったか?」と声を掛けられた。

 ケガのことを知っていて言っているのか、知らないで言っているのか。分からないまま、「守備練習で味方選手と交錯して右ひざの上と腰を痛め、別メニューで調整している」と説明すると、広報の1人が言った。

「いや、イチローはケガをしない」

 なぜか、自信たっぷり。気のせいだとも言いたげだったが、確かにイチローとケガの関係は、アメリカのドナルド・トランプ大統領とメキシコのエンリケ・ペニャ・ニエト大統領が一緒にゴルフをすることと同じぐらい、イメージを一致させることが難しい。

 マリナーズ時代を振り返ると、2002年4月、ファウルボールを追って一塁側のフェンスに左ひざをぶつけ、試合途中で退いた。4針縫い、翌日の試合を欠場したが、2日後には 復帰している。2009年は、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)から戻って来てから体調不良を訴えると胃潰瘍と診断され開幕戦を欠場したが、故障者リストに入ったのは今でもそのときだけ。そもそもあのとき、本人は、「開幕からいけた」と復帰したときに話しており、大事を取ったに過ぎない。その年の8月、左ふくらはぎの張りで8試合を欠場したが、過去、ケガらしいケガといえば、このときだけではないか。

腰の回復は100%と言えないよう

外野の守備練習中にバーンズと接触し、コーチ(右)から声を掛けられるイチロー 【写真は共同】

 ただ今回、マリナーズの広報が信じられなくても、イチローが外野のコミュニケーションドリルでブランドン・バーンズと接触して、右ひざの上を打撲し、腰を痛めたのは事実だ。21日で、ちょうど1カ月になる。3月5日には実戦復帰したが、腰に関してはまだ、100%とは言えないよう。交錯してから3日後に室内ケージで打撃練習を始め、キャッチボールも始めたが、その時点で「腰は分からない」と口にし、こう続けていた。

「朝起きたとき、今日は明らかに良かったけど、動くと(痛みが)出て来たりとか、そんな感じ」

 その時点で、腰の回復には時間がかかるかもしれない、とにおわせていたわけだが、15日の試合後の段階でも、「なかなか、そこから進まないですよ。最後のちょっとはなかなか進まないです」と話したそうだ。必然、違和感が消えるまでは、どこかでセーブをしながらの調整になるが、オープン戦の初出場が3月5日までずれ込んだことは、結果オーライになる可能性はある。

 今年のキャンプは、WBCがある関係で1週間程度早く始まっている。昨年の場合、2月23日がキャンプ初日で開幕が4月5日。今年は、開幕が4月3日と2日しか違わないのに、キャンプ初日は17日だった。そもそも長いキャンプを乗り切るとしたらそれなりに力の入れどころ、抜きどころを意識する必要があるが、ケガをしたことで図らずも調整ペースがスローダウン。スイッチを切り替えるまでもなく、そういう状況となっている。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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