小技を絡め高い野球脳を表現すべし 侍ジャパン、世界一へのカギ〜打者編〜

中島大輔

ベンチの意図をくんだ選手たち

鈴木のオーストラリア戦での内野安打には右打ちへの意識がみえた 【写真は共同】

 8日のオーストラリア戦では、右打ちの指示がその後の同点劇につながった。5回無死二塁から鈴木誠也は真ん中低めのスライダーに食らいつき、セカンドへの内野安打としてチャンスを拡大した。

 ピッチャー方向への当たりで「うまく対応できたわけではありません」と振り返ったが、右方向への意識があったからこそ、このボールに手を出し、結果、同点に追いつくことができた。相手に1点リードを許し、苦しい試合展開だったが、仕掛ける姿勢が実ったと言える。

 大会前、「基本的にクリーンアップは動かさない」と話していた小久保監督の姿勢を不安に感じていたが、いざ大会が始まってみれば、打順を柔軟に組み替えた。前言には、選手を奮起させる意図があったのかもしれない。

 12日のオランダ戦では相手の先発・バンデンハーク対策として、1番に田中広輔を抜てき。8番には秋山を起用した。

 田中は無安打に終わったものの、この左打者をトップバッターに据えて足や小技で揺さぶりをかけていくというベンチの狙いは、チームに伝わったはずだ。かたや秋山は2回に犠牲フライで先制点を呼び込むと、続く3回にはタイムリーヒットで期待に応えた。オランダ戦で東京ラウンド最大の山場を乗り越えた裏には、ベンチの意図を現場の選手たちがくんだ点が見逃せない。

自分たちのプレーをすることが大切

日本が誇る結束力でメジャーリーガーがそろう相手をのんでかかりたい 【写真は共同】

 これからの相手はメジャーリーガーの一線級がそろう強豪になるが、過去出場の2大会ともに優勝を経験した青木は、チームとして求められる姿勢をこう語った。

「相手はメジャーリーガーですけど、こっちがのんでかかるくらいじゃないといけない。相手はむしろそういう気持ちできますからね。チームとしてしっかりやっていければ、それができると思います。基本的には今まで通りの戦い方をすること。これまで自分たちの結果がついてきたわけですから、それを信じて、自分たちのプレーをすることがすごく大切だと思います」

 一方、小久保監督はこう話した。

「出てくる国はおそらくみんな顔と名前の一致するようなバリバリのメジャーリーガーです。まず球場の雰囲気にのまれないこと、相手の選手に名前負けしないことは非常に大切だと思います。われわれが乗り込んでいくわけですから、より強い結束力を持っていかなければいけないと思います」

 今まで通りの戦い、そして結束力というキーワードを考えると、準決勝以降はただ打ち勝つのではなく、日本らしい小技を絡めていくことが求められる。それはアメリカや中南米勢とは異なる、侍ジャパン特有のストロングポイントだ。日本の選手たちが誇る高い野球脳をグラウンドで表現できたとき、「世界一奪還」が見えてくる。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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