異色の逆輸入右腕・村田透の率直な思い 7年ぶりの日本球界復帰で「恩返しを」
不思議な感覚になったメジャー初登板
渡米5年目で念願のメジャー初登板を記録。結果は残せなかったが「特別なもの」だったと振り返る 【Getty Images】
──アメリカに渡って5年目にはメジャーの舞台にも立ちました。あのマウンドというのはやっぱり特別なものでしたか。
なんだかすごく不思議な感覚になったんですよね、あの日って。
──不思議……ですか?
マウンドに向かう前、それこそ1球目を投げるときに目の前がぐわ〜んって回ったんです。そこでこれまでのいろんなことがフラッシュバックのように駆け巡ったんですよね。それこそアマチュアから巨人時代のこと、マイナーで投げているときのことが。ああいった感覚になったのは後にも先にもそのときだけですし、これはずっと僕の記憶の中から消えることはないと思います。
──試合は3回1/3を投げて4安打5失点(自責3)と粘投するも勝ち星は付きませんでした。
もう少し良いピッチングをしたかったですけど、そのときの自分の全力は出せたかなと。ただ、投げ終わったときは「またこのマウンドに帰ってこないといけないな」と思いましたよね。それぐらい雰囲気も素晴らしかったですし、やっぱり特別なものでした。あとはチャレンジすれば道は開けるんだなということも教えてくれたマウンドでした。
──実際に先発を言い渡されたのはどういったシチュエーションで?
2日前に言われたんですよね。アメリカってマイナーでも先発は、登板する日は自分の時間で球場に行っていいので、その日はナイターだったので昼遅くまで家にいたんですよね。そしたらチームの監督から「早く来い」って電話がかかってきて。それですぐに車で球場に向かったんですけど、運転しながら「もしかしたらメジャーなのかな……」というのも少しだけ考えました。その年はこれまでで一番結果も出ていたので。それで球場に着いてロッカールームで監督とちょうどバッタリ会ったんです。
──そこで言われたと。
いや、最初は延々とどうでもいい世間話やジョークばかりで「自分は登板日なのに何のために呼ばれたんだろう」って感じで(笑)。それでようやく最後の最後に「今日の先発はなしだ。オマエが次に投げるのは明後日だ。メジャーでな」と。
──いかにもアメリカらしいですね。
むこうはとにかくジョークが好きなのと、初めてメジャーに上がる選手にはそういったことをよくやるので。しかも監督室ではなくロッカールームだったので。チームメートもずっとニヤニヤしながら、最後は一緒に祝福してくれて。本当にあれはアメリカに来て良かったなと思えた瞬間でしたよね。
僕は三振をバッタ、バッタと取るピッチャーではないので、まずはしっかりとコーナーに丁寧に集めていくピッチングをしていきたいです。動くボールも使いながら。それが僕の武器であり、スタイルだと思っているので。そのあたりをこれからもアピールしていきたいですね。
──かねてから尊敬する選手に母校(大体大)の先輩でもある上原浩治投手(カブス)の名前を挙げられていますが、アメリカでも交流は?
ありましたよ。ちょくちょく向こうでも連絡をいただいたり、僕もさせてもらったりしました。日米で素晴らしい成績を残されている方ですし、いまでも少しでも追いつきたい大きな存在ですよね。
──最後に日本復帰1年目への意気込みを聞かせてください。
もうチームの日本一連覇に貢献したいという気持ちしかいまはないですね。7年前は叶わなかった日本での1勝も実は自分の中ではそんなに重要視してないというか、とにかく与えられたところでしっかりとした仕事をしたい。それがどこよりも早く声を掛けてくれたファイターズへのなによりの恩返しになると思いますから。31歳のおっさん、頑張ります!
(取材・構成=松井進作)