意識を統一しブルペンの力を最大に 侍ジャパン、世界一へのカギ〜投手編〜

中島大輔

勝ちパターンの1番手として登場する平野 【写真は共同】

 3月7日に第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)初戦を迎える直前、野球日本代表「侍ジャパン」に向けられる視線は決してポジティブなものではなかった。首脳陣が選手のコンディショニングを最重視した一方、調整段階の結果に一喜一憂する見方が大半を占めていたからだ。

 しかし、ふたを開けてみれば東京で無傷の6連勝。5試合に登板した牧田和久は15日のイスラエル戦後、2次ラウンドまでの戦いぶりをこう振り返っている。

「強化試合とかで大会前には不安視されていたと思うんですけど、それが全勝でいけたのは、世界一を奪還するために大事なことだと思います。この勢いのまま、あと2試合勝って世界一をとりたい」

 開幕前、小久保裕紀監督が「日本の武器」と語っていた投手力が、見事なパフォーマンスで応えた。特に1次ラウンドを経て、2次ラウンドで戦い方が固まったのは大きい。先発が4、5回まで投げれば、ブルペン陣で逃げ切る体制が整った。

平野を筆頭に勝ちパターン整う

増井(中央)も思い切りのいい投球を披露した 【写真は共同】

 投げる順番がある程度決まっていて、状況によってそれぞれが登板機会を予測しながら準備していく。決して簡単なことではなく、球界屈指のリリーバーたちが誇る能力の高さを改めて感じさせられた。

 その先鋒(せんぽう)として機能しているのが平野佳寿だ。オリックスでクローザーを務める右腕は侍ジャパンで任せられる役割でのやりがいについて、「特に何も感じていないですね。ただ単に投げて、結果がついているだけだと思う」と話したが、黙々と投げることで力を発揮するタイプなのだろう。

 宮西尚生、秋吉亮という変則の両投手はイニングの途中からでも任せられる点で頼もしく、ブルペンの起用の幅を広げている。12日のオランダ戦で8回、1死満塁のピンチをストレート勝負で切り抜けた増井浩俊は、「プレミア12のときには丁寧にいきすぎて結果が出なかったので、今日は自分の持っているものを出そうと思い切って腕を振っていきました」と振り返ったように、過去の反省を生かして好投につなげた。

 牧田和久は1次ラウンド初戦のキューバ戦、8点リードでマウンドに上がった2次ラウンドのイスラエル戦こそ不安を残した一方、それ以外の3試合は落ち着いた投球で完璧な内容だった。イスラエル戦についてはクローザーとして大量リードで投げる難しさがあったと振り返ったが、「投げ急いだ部分があったので、しっかり修正してコンディションを整えていきたい」と修正点を自覚している。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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