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9回は三振の取れる則本を優先!?
オランダ戦薄氷の勝利も継投に疑問

見事だったリリーフ陣の踏ん張り

毎回のように得点圏に走者を背負う展開になりながら、グッと踏みとどまったリリーフ陣の好投は見事だった
毎回のように得点圏に走者を背負う展開になりながら、グッと踏みとどまったリリーフ陣の好投は見事だった【写真は共同】

 第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)2次ラウンド初戦の野球日本代表「侍ジャパン」対オランダが行われた東京ドームは、異様な緊迫感に支配されていた。延長11回タイブレークまでもつれ込んだ4時間46分、時計の針が進めば進むほど、その空気は張り詰めるばかりだった。


「こういう試合を取る、取らないの違いは、本当に大きい。短期決戦の怖さを改めて知らされた試合でした」


 青木宣親がそう振り返ったように、8対6でこの試合を取った意義は極めて大きい。これでアメリカで行われる決勝ラウンド進出に向け、グッと一歩優位に立ったことは間違いない。


 勝敗を分けるポイントは数多くあり、どこかで一つ違えば、勝ち負けや試合展開は大きく変わっていた。そんななかで侍ジャパンが薄氷の勝利を手にした要因は、小久保裕紀監督が「日本の武器」と話していた投手力によるところが大きい。1点リードを奪った5回以降、毎回のように得点圏に走者を背負う展開になりながら、グッと踏みとどまったリリーフ陣は見事の一言に尽きる。

則本登板に「理由はないです」

1点リードの9回に登板した則本だが、オランダ打線につかまった
1点リードの9回に登板した則本だが、オランダ打線につかまった【写真は共同】

 だからこそ、疑問が残った。なぜ、9回のマウンドに則本昂大を送ったのだろうか。


「今日は則本で行こうと。理由はないです」


 試合後の会見で指揮官はそう説明した。理由がないはずがない。なぜクローザーに据えると明言していた牧田和久ではなかったのか。


「9回は自分かなと思ったんですけど、(投手コーチの)権藤(博)さんがブルペンに来て、『則本で行く』と言っていました」


 9回裏に突入する直前についてそう振り返った牧田は、「たぶん」と前置きしたうえで、継投策についてこう語った。


「一発のあるチームなので、三振を取れるピッチャーで(相手打線の)力には力で行ったほうがいいと思うので、則本を9回に決めたと思いました」


 結果、則本は1点のリードを守り切れずに、同点に追いつかれた。ホームランこそ打たれなかったものの、四球と2本のシングルヒットを打たれて勝利を手繰り寄せることができなかった。

10回の登板へ用意周到だった牧田

延長を想定して準備をしていたという牧田
延長を想定して準備をしていたという牧田【写真は共同】

 試合は延長戦に突入し、10回からマウンドに上がった牧田は完璧な投球で勝利投手になっている。その裏にあったのが、周到な準備だ。自分の出番だと考えていた9回の登板がなくなった直後、「最悪を想定して、(自分は)延長でいくんだろうなと思って準備していました」。


 いざ上がった延長のマウンドで心掛けたのは、9回、指揮官が則本にマウンドを託した理由として挙げたことと同じだった。


「自分特有の下から浮き上がるボール、真っすぐを胸元に投げればホームランはないかなと思っていました。イメージ通りのピッチングができたと思います」


 牧田の武器はアンダースローから投げ込む独特の軌道に加え、もう一つある。どんな相手にも屈しない強心臓だ。ミックスゾーンを歩く牧田を捕まえて話を聞くと、改めてそのメンタルに驚かされた。ペナントレースの最中、メットライフドーム(前・西武プリンスドーム)で顔を合わせたときと同じような素振りで答えたからだ。


「点差どうこうはまったく考えていなかったです。バッターを一人一人抑えることだけしか意識していませんでした」

1球1球ゆっくり投げることを意識

普段のシーズンと違ってゆったりとした投球テンポを心掛けたという牧田
普段のシーズンと違ってゆったりとした投球テンポを心掛けたという牧田【写真は共同】

 さかのぼること5日前、今大会初戦で9回のマウンドに上がった牧田は、無失点に抑えながらも被安打2、与四球1と不安を残す投球だった。その一因として口にしたのが、ペナントレースとは異なる環境だった。


「普段の試合だと相手の応援があるけど、今回はなく、シーンとしている中で観客の声が響き、逆に自分のペースを崩されている部分がありました」


 埼玉西武での牧田は相手打者が思わず打席を外すほどテンポよく投げ込み、自分のペースに持ち込んで打ち取っていく。しかし、オランダ戦で10回、そして2点を勝ち越して迎えた11回タイブレークの無死一二塁ではあえて自分の投球テンポを遅くして、チームに勝利を引き寄せた。


「投げ急いで、投げミスが一番ダメ。一発のあるチームなので、そこに一番怖さがあります。だから今日は逆に間をとって、しっかりと1球1球ゆっくり投げることを意識していました」

中島大輔
中島大輔

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた『野球消滅』(新潮新書)。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』がミズノスポーツライター賞の優秀賞。

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