9回は三振の取れる則本を優先!? オランダ戦薄氷の勝利も継投に疑問
見事だったリリーフ陣の踏ん張り
毎回のように得点圏に走者を背負う展開になりながら、グッと踏みとどまったリリーフ陣の好投は見事だった 【写真は共同】
「こういう試合を取る、取らないの違いは、本当に大きい。短期決戦の怖さを改めて知らされた試合でした」
青木宣親がそう振り返ったように、8対6でこの試合を取った意義は極めて大きい。これでアメリカで行われる決勝ラウンド進出に向け、グッと一歩優位に立ったことは間違いない。
勝敗を分けるポイントは数多くあり、どこかで一つ違えば、勝ち負けや試合展開は大きく変わっていた。そんななかで侍ジャパンが薄氷の勝利を手にした要因は、小久保裕紀監督が「日本の武器」と話していた投手力によるところが大きい。1点リードを奪った5回以降、毎回のように得点圏に走者を背負う展開になりながら、グッと踏みとどまったリリーフ陣は見事の一言に尽きる。
則本登板に「理由はないです」
1点リードの9回に登板した則本だが、オランダ打線につかまった 【写真は共同】
「今日は則本で行こうと。理由はないです」
試合後の会見で指揮官はそう説明した。理由がないはずがない。なぜクローザーに据えると明言していた牧田和久ではなかったのか。
「9回は自分かなと思ったんですけど、(投手コーチの)権藤(博)さんがブルペンに来て、『則本で行く』と言っていました」
9回裏に突入する直前についてそう振り返った牧田は、「たぶん」と前置きしたうえで、継投策についてこう語った。
「一発のあるチームなので、三振を取れるピッチャーで(相手打線の)力には力で行ったほうがいいと思うので、則本を9回に決めたと思いました」
結果、則本は1点のリードを守り切れずに、同点に追いつかれた。ホームランこそ打たれなかったものの、四球と2本のシングルヒットを打たれて勝利を手繰り寄せることができなかった。
10回の登板へ用意周到だった牧田
延長を想定して準備をしていたという牧田 【写真は共同】
いざ上がった延長のマウンドで心掛けたのは、9回、指揮官が則本にマウンドを託した理由として挙げたことと同じだった。
「自分特有の下から浮き上がるボール、真っすぐを胸元に投げればホームランはないかなと思っていました。イメージ通りのピッチングができたと思います」
牧田の武器はアンダースローから投げ込む独特の軌道に加え、もう一つある。どんな相手にも屈しない強心臓だ。ミックスゾーンを歩く牧田を捕まえて話を聞くと、改めてそのメンタルに驚かされた。ペナントレースの最中、メットライフドーム(前・西武プリンスドーム)で顔を合わせたときと同じような素振りで答えたからだ。
「点差どうこうはまったく考えていなかったです。バッターを一人一人抑えることだけしか意識していませんでした」
1球1球ゆっくり投げることを意識
普段のシーズンと違ってゆったりとした投球テンポを心掛けたという牧田 【写真は共同】
「普段の試合だと相手の応援があるけど、今回はなく、シーンとしている中で観客の声が響き、逆に自分のペースを崩されている部分がありました」
埼玉西武での牧田は相手打者が思わず打席を外すほどテンポよく投げ込み、自分のペースに持ち込んで打ち取っていく。しかし、オランダ戦で10回、そして2点を勝ち越して迎えた11回タイブレークの無死一二塁ではあえて自分の投球テンポを遅くして、チームに勝利を引き寄せた。
「投げ急いで、投げミスが一番ダメ。一発のあるチームなので、そこに一番怖さがあります。だから今日は逆に間をとって、しっかりと1球1球ゆっくり投げることを意識していました」