なでしこがアルガルベで築いた新たな土台 得点王・横山、初代表の長谷川が存在感
2勝2敗の6位で大会を終える
新体制で臨んだ初の国際大会となるアルガルベカップ。6位に終わった今大会で得た収穫と課題とは? 【松原渓】
2016年3月のリオデジャネイロ五輪アジア最終予選で敗れたなでしこジャパンは、前任の佐々木則夫監督が退任し、4月に高倉麻子監督の下で新たなスタートを切った。これまでに2度の海外遠征(米国、スウェーデン)と3度の国内合宿を行っている。
なでしこジャパンの目標は19年のフランスワールドカップ(W杯)と20年の東京五輪での優勝だ。4月9日にはコスタリカとの国際親善試合(熊本県民総合運動公園陸上競技場)が行われ、その後は海外遠征も予定されている。また、12月に日本で行われるEAFF E−1フットボールチャンピオンシップ、18年4月にヨルダンで開催予定のAFC女子アジアカップが控えている。
目指すのは「攻撃的なサッカー」
高倉監督(左)の目指すサッカーは攻撃的なサッカーだ 【松原渓】
組織的に戦いながら「個」の強さも求め、攻撃にバリエーションを持たせながら、守備にも徹底したこだわりを見せる。欧米の大柄な選手たちに対して「日本(人)がフィジカルで弱いことを言い訳にしない」(高倉監督)ために、国内合宿ではスプリントトレーニングやフィジカルトレーニングも積極的に取り入れてきた。
育成年代から指導者として共に同じ道を歩んできた大部由美ヘッドコーチは、チームを支える頼もしい存在だ。現役時代はなでしこジャパンのディフェンスリーダーで、「闘将」の二文字がぴったりのキャプテンだった。高倉ジャパンの攻撃的なサッカーには欠かせない、緻密な守備を構築するスペシャリストである。
世界における日本の現状を知る絶好の機会
チームは、まさに土台づくりの真っ最中。日本の現状を知り、多くの課題が出た 【松原渓】
今大会には12チームが出場し、日本はグループリーグでスペイン、アイスランド、ノルウェーと対戦。4試合目の順位決定戦ではオランダと対戦し、8日間で4試合というハードなスケジュールをこなした。
初戦はスペインを相手に1−2と敗戦。組織的かつ速さと強さを備えたスペインのプレッシャーに、日本の良さであるパスワークは封じられた。2点を先制された後、横山久美のゴールで1点を返したものの、攻守において選手同士の距離感が悪く、サポートの質に課題を残す試合となった。
続く第2戦はアイスランドに2−0で勝利を収めた。初戦の教訓を生かして、サポートの質を改善。選手同士がこまめに声を掛け合い、互いの距離感を修正することでスムーズにパスがつながる場面も見られた。代表初先発となった20歳のMF長谷川唯が2ゴールを挙げる活躍で、華々しいデビューを飾った一方で、チームとしては多くのチャンスを生かし切れず、ゴール前のコンビネーションに課題を残した試合でもあった。
ノルウェーとの第3戦は2−0で勝利。高さとスピードを生かした攻撃を得意とするノルウェーに対し、前半は拮抗(きっこう)した駆け引きが続いたが、後半に入ってMF阪口夢穂を中心に攻撃の流れを引き寄せ、横山が2ゴールを奪う活躍を見せた。選手同士の距離感が良く、ゴール前でのコンビネーションプレーにも光るものがあった。しかし、個人の判断ミスやボールコントロールにおけるミスが目立つなど、新たな課題も浮き彫りになった。
グループステージを2勝1敗で終えたなでしこジャパンは、順位決定戦(5位決定戦)に回ることとなった。その順位決定戦ではオランダに2−3で惜敗。前半はオランダが得意とするカウンターとスピードに苦しめられ、早々と2失点を喫してしまう。その後、横山のミドルシュートですぐさま1点を返すと、籾木結花のクロスが相手のオウンゴールを誘い、一時は同点に追い付いた。しかし、マンディ・ファンデンベルフの退場により、10人での戦いを強いられたオランダの堅い守備を崩せず、終了間際に勝ち越しゴールを決められ、後味の悪い敗戦となった。失点の要因である集中力の欠如と攻撃時のパスミスは今後の課題と言えるだろう。