ドミニカ共和国、WBC連覇へ死角なし 母国のために集う大物選手とその理由

丹羽政善

調整遅れも参加を決断したベルトレ

第3回大会に続いての連覇を狙うドミニカ共和国。投打ともに層が厚く、優勝候補の筆頭に挙げられる 【写真:ロイター/アフロ】

 参加の熱意に、これほど温度差があるとは……。

 6日朝(現地時間)、多くのメディアに囲まれたレンジャーズのエイドリアン・ベルトレ(ドミニカ共和国)は、「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に参加する」とついに明言した。

 ベルトレは、キャンプ前の自主トレで左ふくらはぎを痛めた。キャンプの序盤は別メニュー。3月3日になってようやくオープン戦に初出場したが、調整が遅れていることは明らか。当然ながらレンジャーズは懸念を示したが、ベルトレはたとえベンチからでも、「チームに貢献したい」と、最終的にはチームの許可も取り付け、決断した。
 
「連覇するためだったら、どんな形でもいいからチームの助けになるようなことをしたい」

 彼にとってはおそらく最後のWBCという事情もあるが、再発のリスクと隣り合わせ。米大リーグ通算3000安打まで残り58本と迫っている今季の開幕にも影響が出かねないが、「母国のために戦いたい」という思いは、純粋そのもの。他に優先すべき事情があったり、さまざまなしがらみがあったりして、出場を見合わせた、あるいは見合わせざるを得なかった選手とは、ずいぶんWBCへの向き合い方が違う。

ベテランもWBC用に早めの調整

ベテラン右腕ボルケスは1次ラウンドC組第3戦の米国戦へ先発予定 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 オフにマーリンズと契約し、2009年と13年のWBCに出場したエディンソン・ボルケスも早めに仕上げている。7月には34歳となるベテランが、オープン戦の初戦に登板した。

「WBCがあるから、その前に3回先発したかった。だからオープン戦の初戦までに体を作っておいた」

 WBCにここまで真剣なチームが前回大会で優勝したのも、さもありなん、という感じか。

 ところでボルケスは2月中旬の段階で、「12日のコロンビア戦に投げる」と話し、ドミニカ共和国の先発ローテーションも教えてくれた。
 
「初戦がジョニー・クエト(ジャイアンツ/昨季18勝5敗)、2戦目がカルロス・マルティネス(カージナルス/昨季16勝9敗)で、3戦目がオレだ」

早い段階から役割を明確化

昨季18勝のクエトは父親の病気のために1次ラウンド欠場を決めたが、2次ラウンドから参加する 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 先発の柱となるクエトは、父親の病気のために1次ラウンドを欠場することが決まり、繰り上がってボルケスが2試合目の米国戦に投げることになったが、それでもかなり早い段階でローテーションが確定し、その日から逆算してオープン戦での登板予定をマーリンズ側とも話し合うことができた。

 おそらく、他の選手にも役割が伝えられているはずで、周到な準備、チーム内で意思の疎通がしっかりできていることがうかがえる。さらにベルトレの決断を最後まで待った気遣いからも、選手に対する敬意が感じられる。

 そうしてまとめる側の体制がしっかりしているのだから、選手らも気持ちよく参加を決めたのではないか。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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