小兵力士・石浦の真価問われる3月場所 宇良とのライバル対決は「引かずに我慢」

スポーツナビ

「出来過ぎ」だった11月場所の敢闘賞

昨年11月場所では10勝を挙げ敢闘賞を獲得した石浦 【写真は共同】

 3月場所を西前頭11枚目で迎える石浦将勝。173センチ、114キロの小兵力士は新入幕を果たした昨年11月場所には10勝5敗の成績で敢闘賞を獲得し、一躍時の人となった。立ち合いから素早く動き、相手の懐に入って左四つに組んで下手投げ、もしくは変化して相手の後ろに回り込む相撲で2日目からは10連勝をマーク。高校相撲の名門・鳥取城北高の石浦外喜義総監督を父に持ち、自身も同校相撲部から大学相撲の名門・日本大学へ進学。卒業後はオーストラリアへ語学留学し、現地でハリウッド映画のオーディションに合格するもそれを蹴って宮城野部屋に入門、という異色の経歴もあり、テレビのワイドショーなどでも取り上げられた。

 だが、盛り上がる周囲を尻目に本人は冷静だった。11月場所は終盤に4連敗。千秋楽では191センチの長身、栃ノ心に対しておっつけて左四つを狙うが、かえって左を差され肩透かしで敗れた。石浦は幕内通算在位46場所を誇るジョージア出身関取との初顔合わせを「仕切りの時から強さを感じていました。雰囲気だと思います」と振り返る。

 この悪い流れは年が明けても続き、1月場所は初日から3連敗。本人も「11月場所は出来過ぎ、厳しい場所になる」と予想していたが、それが的中する。

 4日目の身長193センチ・輝との対戦では、張り手で起こされて一気に土俵際まで追い詰められるが、そこから巻き返してなんとか土俵中央に戻すと、はたき込みを見せながら最後は押し出して初白星。「我慢して、我慢して勝つことができた」という一番だった。

 その後は白星と黒星が交互に続き、6勝9敗と負け越す悔しい結果に。だが、光明も見えた。9日目の佐田の海との一番だ。立ち合いで低く当たりながら左からおっつけて、引いてしまった相手を一気に押し出した相撲を「完璧な相撲」と自画自賛する。

鷲羽山と同じ濃紺の締め込みで挑む

石浦が憧れる存在として挙げる鷲羽山。最高位は関脇で36歳まで現役を続けた 【写真は共同】

 真価が問われる3月場所へ向けて、石浦はこれまで通り下半身と背中のトレーニングを地道に続けている。立ち合いから一気に相手の懐に入って、そのままのスピードで前に出る相撲が持ち味の小兵力士にとっては、この瞬発力が生命線とも言えるだろう。

 さらに、石浦は今場所からある“変化”をする。今場所から締め込みの色を緑から濃紺にあらためるのだ。憧れの力士、昭和50年代に活躍した元関脇の鷲羽山に倣ってのことだと言う。

「自分は仕切りの際に相手に所作(のペース)を合わせてしまうことが多いんですが、鷲羽山さんはそっぽを向いて自分のペースを作っている」と、目を輝かせて語る石浦は、濃紺の締め込みでさらなる飛躍を目指す。

宇良との初対戦は45秒の熱戦

 心機一転、臨む3月場所だがライバルが再び石浦の前に現れた。石浦と同じく身長173センチ、珍しい決まり手を繰り出し相撲ファンを沸かせてきた宇良が新入幕を果たす。
 
 西前頭11枚目の石浦と西前頭12枚目の宇良の対戦が組まれるのは間違いない。実現すれば十両時代の昨年7月場所以来2度目。この時は互いに相手の下に潜り込もうと体を低くし、レスリングのような組み手争いを繰り広げ、最後は宇良が一気に前に出て押し出す約45秒の大相撲となり、観客からの歓声はまるで幕内後半のような大きさだった。

「十両で対戦した時はあまり意識しないようにしていたのですが、(今は)とにかく相手を倒すことをバリバリ意識しています。お互い小兵ということで意識はしていますし、一番勝ちたい力士です」とライバル意識は十分。戦略については「(宇良は)トリッキーな相撲をするので、とにかく引かずに我慢すること。十両と幕内では景色が違う。九州(11月場所)から自分は景色が違った。名古屋(7月場所)で初対戦した時にはふっ飛ばされたのでやり返したい」とリベンジに燃えている。

 新横綱・稀勢の里への注目などもあり3月場所では、発売初日に全日程の前売り券が完売するなど、角界への注目度も高まっている。
「小さくてもどんどん前に出ることが自分の良い相撲だと思うので、そういった相撲をとりたい」と意気込みを明かす石浦。宇良と共に切磋琢磨(せっさたくま)し、さらに進化することで、新時代を象徴する小兵力士となれるのか? 真価が問われる3月場所がまもなく初日を迎える。

(取材・文:石橋達之/スポーツナビ)

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