小兵力士・石浦の真価問われる3月場所 宇良とのライバル対決は「引かずに我慢」
「出来過ぎ」だった11月場所の敢闘賞
昨年11月場所では10勝を挙げ敢闘賞を獲得した石浦 【写真は共同】
だが、盛り上がる周囲を尻目に本人は冷静だった。11月場所は終盤に4連敗。千秋楽では191センチの長身、栃ノ心に対しておっつけて左四つを狙うが、かえって左を差され肩透かしで敗れた。石浦は幕内通算在位46場所を誇るジョージア出身関取との初顔合わせを「仕切りの時から強さを感じていました。雰囲気だと思います」と振り返る。
この悪い流れは年が明けても続き、1月場所は初日から3連敗。本人も「11月場所は出来過ぎ、厳しい場所になる」と予想していたが、それが的中する。
4日目の身長193センチ・輝との対戦では、張り手で起こされて一気に土俵際まで追い詰められるが、そこから巻き返してなんとか土俵中央に戻すと、はたき込みを見せながら最後は押し出して初白星。「我慢して、我慢して勝つことができた」という一番だった。
その後は白星と黒星が交互に続き、6勝9敗と負け越す悔しい結果に。だが、光明も見えた。9日目の佐田の海との一番だ。立ち合いで低く当たりながら左からおっつけて、引いてしまった相手を一気に押し出した相撲を「完璧な相撲」と自画自賛する。
鷲羽山と同じ濃紺の締め込みで挑む
石浦が憧れる存在として挙げる鷲羽山。最高位は関脇で36歳まで現役を続けた 【写真は共同】
さらに、石浦は今場所からある“変化”をする。今場所から締め込みの色を緑から濃紺にあらためるのだ。憧れの力士、昭和50年代に活躍した元関脇の鷲羽山に倣ってのことだと言う。
「自分は仕切りの際に相手に所作(のペース)を合わせてしまうことが多いんですが、鷲羽山さんはそっぽを向いて自分のペースを作っている」と、目を輝かせて語る石浦は、濃紺の締め込みでさらなる飛躍を目指す。
宇良との初対戦は45秒の熱戦
西前頭11枚目の石浦と西前頭12枚目の宇良の対戦が組まれるのは間違いない。実現すれば十両時代の昨年7月場所以来2度目。この時は互いに相手の下に潜り込もうと体を低くし、レスリングのような組み手争いを繰り広げ、最後は宇良が一気に前に出て押し出す約45秒の大相撲となり、観客からの歓声はまるで幕内後半のような大きさだった。
「十両で対戦した時はあまり意識しないようにしていたのですが、(今は)とにかく相手を倒すことをバリバリ意識しています。お互い小兵ということで意識はしていますし、一番勝ちたい力士です」とライバル意識は十分。戦略については「(宇良は)トリッキーな相撲をするので、とにかく引かずに我慢すること。十両と幕内では景色が違う。九州(11月場所)から自分は景色が違った。名古屋(7月場所)で初対戦した時にはふっ飛ばされたのでやり返したい」とリベンジに燃えている。
新横綱・稀勢の里への注目などもあり3月場所では、発売初日に全日程の前売り券が完売するなど、角界への注目度も高まっている。
「小さくてもどんどん前に出ることが自分の良い相撲だと思うので、そういった相撲をとりたい」と意気込みを明かす石浦。宇良と共に切磋琢磨(せっさたくま)し、さらに進化することで、新時代を象徴する小兵力士となれるのか? 真価が問われる3月場所がまもなく初日を迎える。
(取材・文:石橋達之/スポーツナビ)
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【画像提供:大空出版】
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