日本を勇気づけた菊池のダブルプレー 世界一経験者・岩村明憲氏が解説

スポーツナビ
 第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表が7日、1次ラウンドB組初戦のキューバ戦に11対6と快勝。2大会ぶり3度目の世界一奪還へ好スタートを切った。初回の筒香嘉智の先制タイムリー、先発・石川歩の4回1失点の好投、山田哲人のタイムリー二塁打、松田宣浩の3ラン、筒香の2ランなど数々の好プレーが飛び出した。果たして勝利のポイントとなったワンプレーはどこなのか? 第1回、第2回大会でWBC日本代表に選出され、世界一へ大きく貢献した岩村明憲氏に解説してもらった。

勝利のポイント:初回の守備

 岩村氏が勝利のポイントに挙げたのは、WBC初戦で緊張感漂う日本の1回表の守備で飛び出したセカンド菊池涼介のダブルプレー。石川が先頭打者サントスに内野安打で出塁を許すと、アヤラのサードゴロを松田がファンブル。いきなり無死一二塁のピンチを迎えた。初回から強打のキューバに先制点は許したくない場面だ。

 続く3番セペダの打球は強烈なゴロとなって一二塁間を襲うも、菊池がスライディングキャッチして4−6−3の併殺打。その後、石川が後続を抑えて得点を許さなかった。“ピンチのあとにチャンスあり”の格言どおり、日本は1回裏に3番・青木宣親の二塁打、筒香のライト前タイムリーで先制した。

 結果として、日本に大きく流れを引き寄せる菊池のダブルプレーとなった。

セカンド菊池の起用の意味

以下は岩村氏の解説

「初回の菊池君のダブルプレーですよね。一番硬さが出る初戦の初回で、打ち取ったとはいえ、ショート内野安打とサードエラーでいきなり無死一二塁。菊池君のプレーで2死三塁にできたのは大きな意味がありました。

 最初のアウトを取るまで選手はいろいろな不安というか、よそで野球をやっているような感じになるんですけど、ああやってアウトを取れて、チーム全体で『これでオレたちのリズムでいける』と自信になったと思います。

 また、正面の打球じゃなくて、ちょっと打球も速くて、一二塁間の打球をスライディングキャッチしました。普通のプレーよりも盛り上がりますよね。みんなが勇気付けられたダブルプレーになりました。

 ピッチャーも含めて試合の立ち上がりは難しいです。野手も自分のところにボールが飛んでくるまでは非常に難しい感覚の中でやっていますが、初めての打球で『あれぐらいは取れますよ』とああいうプレーを普通にやってのけるのは、菊池君の技術の高さを物語っています。

 チームとして守備力を重視した中で、菊池君を起用した意味があったと思います」

9番でいいという松田の存在

「ワンプレーというわけではないですが、松田君の存在も大きかったですね。

 4安打を打っただけではなくて、彼の口から「僕は9番の起用でもいいです」と言ったことですよね。僕も第2回大会で9番を打ちましたけど、9番を打つことに自分の気持ちを納得させることは簡単ではなかったですから。

 小林(誠司)君が出て8番になりましたけど、『次につなげるんだ』という意識が結果につながりました。3番、4番、5番だけじゃなくて、下位打線でも必ず打点を挙げるチャンスが回ってくると松田君自身も感じていたんだと思います。

 初戦を取って、いい形ではできたと思います。ただ、1次リーグA組では韓国が2敗していますし、オーストラリアも侮れません。しっかり確実に1点を取れるところは取っていくという積み重ねが大事です」

岩村明憲プロフィール

愛媛出身。宇和島東高から1996年ドラフト2位でヤクルトへ入団。2000年からレギュラーを獲得すると、04年には44本塁打を放つなどセ・リーグを代表する三塁手としてベストナイン2回、ゴールデングラブ賞6回を獲得した。07年から渡米し、4年間でデビルレイズなど3球団で活躍。11年から日本球界に復帰すると、楽天、ヤクルトでプレーした。15年からは独立リーグ・福島で監督兼選手として在籍している。WBCには第1回、第2回大会に出場し、2度の世界一に貢献。日本プロ野球通算1194試合、1172安打、193本塁打、615打点、打率2割9分。MLB通算408試合、413安打、16本塁打、117打点、打率2割6分7厘。
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