WBC辞退の嶋、苦渋の決断明かす 「1試合も出ずに臨むのはありえない」

中島大輔

出場辞退となり、囲み取材に臨む嶋 【写真は共同】

 3月4日、野球日本代表「侍ジャパン」の嶋基宏は大阪市内のホテルで囲み取材に応じ、ふくらはぎの張りのため、7日に初戦を迎える第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のメンバーから辞退することを発表した。代わりに埼玉西武の炭谷銀仁朗が招集される。

2学年下の大野に「任せたぞ」

 以下、嶋の一問一答。

――苦渋の決断だったと思います。率直な気持ちを聞かせてください。

 一番はやはり、悔しいです。

――キャンプでケガして、万全の状態になるにはもう少し時間がかかるということですか。

 出るからには100パーセント、120パーセントで出ないと、代表にもそうですし、応援してくださるファンの方々にも迷惑がかかるので。正直、今の体の状態ではパフォーマンスできないと自分で判断したので、こういう決断をさせていただきました。

――監督にはどんな話をしましたか。

 久米島でケガをした3日後くらいに小久保監督が来られて、「ケガをしていてもいいから、行けるところまで一緒に帯同してほしい。少しの可能性があるなら、行けるところまで一緒に行こう」という話をいただいたので、僕もそういうつもりでした。でも、やはり厳しいということで2日前くらいに小久保監督に僕から話をさせていただきました。

――監督の返事は?

 わかったと。

――2013年に小久保監督が就任して以来、キャプテンをするなど代表への思いは強いと思う。その気持ちは?

 ずっと選んでいただいて光栄でした。今回、最後のところまで来て、次回WBCがあったらそこで選ばれるような成績を残すという新たな目標ができたので、また頑張りたいと思います。

――チームは7日から本戦。どんな思いでプレーしてほしいですか。

 選手一人一人が1プレー1プレー、1球1球、日本国民全員が注目して見ていると思います。僕もその一人だと思いますので、とにかく一生懸命応援したいと思います。

――選手からはどんな声をかけられましたか。

 しっかり治せよと。

――選手に声をかける機会はありましたか。

 昨日のゲーム後に小久保監督からそういう場をつくっていただいて、全体の前で話をさせてもらいました。

――その場ではどんな言葉をかけましたか。

 テレビの前で一生懸命応援しますということです。

――ほかのキャッチャーとは話をしましたか。

 若いピッチャーが多いですし、とにかくピッチャーをしっかり引っ張ってほしいと。どうしてもバッテリーが中心になってくると思います。特に大野は僕の二つ年下なので、「任せたぞ」という話をしました。

炭谷には「大会寸前で申し訳ない」

小久保監督就任後はキャプテンを務めるなど、チームの精神的支柱を担った 【Getty Images】

――炭谷捕手とは連絡をとりましたか。

 昨日のゲーム後に連絡をとりました。こんなに大会寸前で申し訳ないと伝えました。(時間が)だいぶ遅かったのでメールしました。

――炭谷捕手から返事はありましたか。

 全然大丈夫です。気にしないでくださいと。

――どういう練習や動きで無理だと感じましたか。

 キャッチャーはとっさの動きが多いですが、そういう動きの確認をまったくできていません。一番は1試合もゲームに出ないで、本大会に臨むのは普通ではありえない。誰もが納得しないと思いますので、それが一番です。

――小久保監督のスタートからキャプテン。侍ジャパンへの想いは?

 僕も常にそういう試合があれば選ばれたいと思ってやっていました。先ほども言いましたけど、今回本大会に出られなかったということで、4年後にWBCがあれば、そこでもう1回選ばれたいという新しい目標ができました。日本国民全体が期待している場所だと思っています。

――辞退を告げる2日前以前に、「厳しいかもしれない」と監督に話をしたことはありますか。

 グラウンドで話をすることはちょくちょくありました。それでも小久保監督もトレーナーの方も「粘れるところまで、行けるところまで待ってみよう、トライしてみよう」ということだったので、そういうふうに話は進みました。

――代表合流時点での(実戦出場までの)青写真はどうでしたか。

 その青写真があったのでこちらに来ました。正直、僕も初めてケガをした場所なので、どれくらいでやっていいかというのもわからなかい部分もありました。(辞退を告げるのが)ギリギリになってしまって申し訳ないです。

――監督は強化試合で最後の1イニングでも出られるのであればと話していたが、その1イニングも厳しいという状況ですか。
 
 以前にも話したんですけど、「出ろ」と言われれば出られますけど、出るからには100パーセント、120パーセントで出たいというのが僕の気持ちです。中途半端なプレーをして、それが敗戦につながってしまったら、それほど悔しいことはないと思うので。

――今後は東北楽天に合流するのですか。

 はい。
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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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