古田敦也氏に聞く侍ジャパンの戦い方 捕手のリードでダメなのは“先入観”

スポーツナビ
 世界でも屈指の実力と言われる投手力を前面に、2大会ぶりの世界一奪還を至上命題とする侍ジャパン。その投手の実力を遺憾なく発揮させるには、捕手のリードが重要になる。今チームでは過去のWBCと違って絶対的捕手が不在と言われている。今回、侍ジャパンの捕手について、日本球界でも歴代屈指の名捕手との誉れ高いOB古田敦也氏に話を聞いた。

若手の爆発的な力の発揮に期待

――今回選出された侍メンバーについてどう思われますか?

「メジャーリーガーがいたら」とか、「大谷(翔平)がいたら」とかファンの方も思うところもあるでしょうけど、逆にこういう機会なので世界へ自分の実力を示す大きなチャンスだと思っている選手はたくさんいると思います。小久保(裕紀)監督も若い選手を使うことになりますから、一皮もふた皮もむけるのか、爆発的な力を発揮するのか。やってみないと分からないですが、そこは期待したいと思います。

――このチームの特長はどこにあると思いますか?

 日本は投手力ですよね。いい打者でもいい投手が相手ではなかなか打てません。パワーで勝負しようとすると、ドミニカ共和国であったり、アメリカであったり、あるいはベネズエラ、キューバ、オランダなどの強打のチームには勝てません。日本の投手力は世界で全然通用しますから。そこを前面に出して、できるだけロースコアのゲームに持ち込んでいければと思いますね。

――今回、選出された投手たちは世界でも通用しますか?

 まだWBC球にアジャストできていない投手もいるようなので、全員が自信を持って通用するとは言い難いですね。それに、まだ時期も3月頭ですし、早めの調整をして来ているとはいえ、日本のボールを持っても完璧じゃない投手がほとんどだと思います。ただ、真剣勝負になればグッと力を出す投手もいますし、しっかりと準備している段階なので、大丈夫だと信じたいですね。

マイナスとは言えない正捕手不在

――小久保監督は「投手力で点を与えない野球」を公言されています。その中で投手の力を引き出すのは捕手ですが、今回の侍ジャパンでは正捕手不在が課題のひとつに挙がります。

 例えば前回だったら阿部慎之助(巨人)、その前だったら城島健司(当時マリナーズ)と固定されていました。今回のような場合、固定しないことが一概にマイナスと決めつけるのではなく、柔軟に対応していけるとも考えられます。

 WBCはベンチ入りの人数も少ないしDH制ということもあり、捕手が固定されていたら現実的に序盤から勝負をかけていくことは難しいです。そういう意味でいうと、今回の場合、監督が代打を出したいなと思うのは、捕手の打順になると思います。小久保監督が今回選ばれた3捕手の実力が同じくらいだと考えているのならば、早い段階でチャンスが来たら代打の切り札を出して、先手先手を取るという作戦を立てられる可能性はありますよね。

――今回は嶋基宏、大野奨太、小林誠司の3人が選出されました。それぞれの特長を考えて、どのような起用方法がベストだと思われますか?

 うーん、難しいですけどね。国際大会を含めて一番経験豊富で安心して見ていられるという点では、嶋が一歩リードしているのかな、と思います。安心だからスタメンで起用するのか、それとも守備固めとして最後に置いておくのかは監督次第です。

 一方、小林と大野は国際経験はあまりないですし、まだまだプロ野球自体の実績は少ないのですが、若い力がいい方向に出る可能性があります。逆に冷静さを保てないということがあるかもしれないですが……。これはどちらに転ぶかは分からないですが、若いからダメだということはないです。往々にして緊迫した国際大会では年齢は関係なく、結局腹を括っていける選手の勝ちですから。

 起用法としては、小久保監督は大野を評価しているようなので、大野を先発にして、嶋を最後に使う。そして菅野が投げるときは同じチームの小林でいくとか柔軟に対応すると思いますね。

球数制限を考えてはいけない

――日ごろコミュニケーションを取らない投手とのバッテリーになります。捕手はどういうところに気をつけるべきですか?

 気をつけないといけないところは、先入観かな。たとえば先入観で、日ごろは敵チームである投手のストレートをいいストレートだと思いこんでいると、勝手にこの投手はストレートに自信があるんだと考えてしまうことがある。しかし、実のところ、その投手は変化球が得意だったとか、インコースに投げるのが得意だったとか、捕手が思っていることと違う場合があるんです。

 従って、先入観を持って多分こうだろうと思うのが一番ダメですね。さらに年齢差が同じぐらいだったらいいんですけど、年齢差があるとお互い遠慮してしまいます。グラウンドで「こういうピッチングはどう?」という話をしても野球界は年齢が下の選手は「はい、そんな感じです」程度のことしか言えないなんてこともありますから。

 試合中でも、投手が首を振ったりすることによって、「こういうことをやりたがっているんだ」ということが分かりますし、リラックスしたときに本音が出るので、食事に行ったりして積極的に話し合ってほしいですね。

――またWBCは球数制限があります。リードに何か影響は出るのでしょうか?

 いや、それはあまりないでしょう。もちろん1球でアウトを取れればありがたいんですけど、そんなわけにもいかないですし、狙ったところにボールが来ない場合もあります。「球数制限があるからこうしよう」とは考えてはいけないと僕は思います。やはり普段のスタイルがありますから、球数制限を考えているから普段と違うことをやって打たれちゃったでは悔いが残りますよね。

 仮に球数が65球と言われて2イニングしか投げられなかったとしても、試合に負けないことが一番ですから。1点取られても2点目は取られないと粘り強くやっていくしかない。あとは全員でつないで勝っていくのが日本の基本的なスタイルですからね。

――侍ジャパンへの期待、エールは?

 若い選手が多いので、いろいろプレッシャーはかかると思います。でも、普段どおりに思い切り振って、思い切り走って、躍動感のある野球を見せてもらって、その結果はやってみないと分からないですけど、十分世界一のチャンスはあると思うので、頑張ってほしいです。

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