侍戦士、甲子園での活躍をプレイバック〜あの時君は若かった〜

楊順行

バッタバッタと三振奪った松井

 そして12年夏は、桐光学園の2年生左腕・松井裕樹が大記録を達成した。1試合22奪三振というべらぼうな数字である。なにしろ対戦相手の今治西は、打球が前に飛んでのアウトが4。それと走塁死1のほかは、すべて三振なのである。松井は8回で過去最多の19に並ぶと、9回は先頭の三振で87年ぶりに記録を塗り替え、おまけに2個を追加。これはもう、ちょっと破られそうにない。

「長い歴史の中で自分の名前が残るのは、プレッシャーにも感じます。でも、記録に恥じないようにレベルを上げたい」と、当時の松井は初々しい。もともと神奈川大会からドクターKと呼ばれ、甲子園では右打者のひざ元へのスライダーが絶品だった。落差が大きいので、見極めればボールになるものもあるが、なにぶん147キロの真っすぐと同じ腕の振りである。高校生には、ちょっとできない芸当だ。6回途中からは9回2死まで10者連続三振(これも大会記録)で、「もともと球数が多い投手だから、スタミナはある」(桐光学園・野呂雅之監督)と、球威はまったく落ちなかった。

 松井は常総学院との2回戦でも19、浦添商との3回戦は12、敗れはしたが準々決勝の光星学院からは15奪三振。1試合あたり17という、まるで劇画のような奪三振率を残した。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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