侍戦士、甲子園での活躍をプレイバック〜あの時君は若かった〜

楊順行

1試合最多打点タイ記録の筒香

「当たればマッハ」と横浜・小倉清一郎部長(当時)が表したのは08年夏、2年生の筒香嘉智に関してだ。だが、こう続く。

「打球の速さは、横浜の歴代ナンバーワン。でも……なかなか当たんないんだよ(笑)」

 1年の夏から強豪の4番に座ったが、3番を打ったこの年のセンバツ以後は苦しんだ。変化球で崩され、ストレートに差し込まれる。南神奈川大会では負担の少ない7番に下がりながら、打率は1割6分7厘のどん底である。

「苦しみました。悩んで、いろんなことを試した」という筒香だが、甲子園入りしてからの打撃練習で、それまで上げていた足をすり足にすると、なんとかきっかけをつかむ。「目線のぶれがなくなった」と臨んだ初戦が、浦和学院戦だ。曇天の5時58分開始の2回、右翼へカクテル光線を切り裂く弾丸の先制2ラン。実に5月以来、3カ月ぶりの1発だった。この一打で覚醒し、4番に戻った大砲は、聖光学院との準々決勝では5回、逆風をものともしないライナーをライトスタンドにたたき込むと、続く6回にはグランドスラム。7回はタイムリー二塁打し、史上2人目の1試合個人最多打点8をマークした。

 当時のメモにある。「満塁弾は、“本塁打はいらないぞ”と塁上の先輩から聞こえて、センター返しを意識しました」。それがライトへ弾丸ライナーだから、やはり天性のスラッガーなのだ。横浜はこの大会、準決勝で浅村栄斗(西武)らのいた大阪桐蔭に敗れたが、筒香は5試合で19打数10安打14打点、3本塁打という破格の数字を残している。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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