平昌金メダル狙う男子モーグル界のホープ 原大智「新しい時代を築きたい」

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W杯で「メンタルが強くなった」

W杯参戦2シーズン目にして、年間ランキングでは日本人最上位となる8位にまで浮上した 【Getty Images】

――カナダと日本でトレーニング法の違いなどはありましたか?

 年齢的なこともあるかもしれませんが、カナダに行ってから(筋力)トレーニングをするようになりました。あと日本人はもちろん、同い年(の選手)もほぼいなくて、年上の人たちとずっとやっていました。

――カナダはW杯総合6連覇中のミカエル・キングスベリーや女子のデュフォーラポイント3姉妹を輩出するなどモーグル大国の1つ。現地のレベルはどうでしたか?

 向こうで最初に出た大会に、カナダのナショナルCチーム(※W杯に出るような代表選手はA、Bチームに所属する)が出場していました。僕も日本ではそこそこのところにいく選手になっていたのですが、それでも今のレベルではまったく歯が立たなかったのを覚えています。すべてが劣っていると感じたので、暇さえあれば練習と筋トレに励むようになりました。

――その後日本代表入りを果たし、W杯参戦2シーズン目にして年間ランキングで日本人最上位(8位)をマークしました。躍進の理由は?

 1年目はW杯という空気の違いにのまれていました。それが2年目にしてどうすれば良いのかということがすぐに分かったんです。メンタルが強くなった瞬間だったと思います。

――W杯では4位が最高。表彰台に上るための課題はどこにあるのでしょうか?

 エアです。昔からの課題ですね。ジャンプが弱いから点が飛びない。(冬季アジア札幌大会で二冠を達成した)堀島選手はエアが得意だから、その武器が””光っている””と感じています。

 それに比べて僕はシーズンを通じてどんどん悪くなってきてしまっていて、今エアにすごく困っている状態なんです。技術は向上しているんですが、シーズン中は(コース状況の違う)各大会に合わせようと体が勝手に対応してしまって、新しいクセが出てきて悪くなってしまう、というのが僕の傾向なんです。そこを直さなければいけないなと思います。

――来年は平昌五輪。エアをどのように強化したいですか?

 まずウォータージャンプ(編注:空中演技を安全に練習するための施設)で今あるクセをすべてなくして最高の状態にして。理想なのは雪とウォータージャンプを同時にやれること。ウォータージャンプではすごいきれいな回転軸でできたりしているんですが、それが雪になると変わってしまうというのが問題です。水ではできるけど雪ではできない、だと話にならないので、ちゃんと直して、雪でも同じことができるようにしたいと考えています。

「圧倒的な力を目指している」

課題としているエアを修正していければ、自身が目指す「圧倒的な力」をつけることができると感じている 【坂本清】

――冬季アジア大会ではデュアルモーグルで銀メダル、シングルで4位入賞。振り返っていかがですか?

 悔しいなという大会でした。同世代の堀島選手が2冠を達成して、自分的には同い年(早生まれで学年は1つ上)のライバルなので、素直には喜べないというのが正直な感想です。これが五輪でなくて良かった、と思います。自分に足りないところを夏に補って、来シーズンまた挑戦したいです。

――女子だけではなく男子にも注目してほしいという気持ちはありますか?

 すごくありますね。昔は男子選手はダメ、と思われていたので、もちろん女子も頑張ってほしいですけど、男子にもこんなに強い選手がいるんだぞ、と思ってもらって、今までの時代を吹き飛ばすような新しい時代を築けたらいいなと感じています。

――男子ならではの見どころを教えてください。

 スピード感ですね。みんなが言うのは、「男子を見てから女子を見るとスローモーションに見える」と。エアの難度も高さもまったく違うので、女子より5倍くらいパワーアップした全体の滑りが魅力だなと思っています。

――今後、どのような選手になっていきたいですか?

 本当の理想は他者を寄せ付けない圧倒的な力を目指していて。ミカエル・キングスベリー選手のような他を寄せつけない滑りを目指しています。

 そのためには、自分はやはりエアを修正していかなければいけないと思っていて、逆にエアさえできればそこに近づけるのかなと思っています。優勝は一番うれしく、人生で一番楽しく思える瞬間です。来年の平昌で金メダルを取って、その勢いで世界選手権も取って、その後W杯で年間総合1位になって、ということを考えています。

(取材・文:藤田大豪/スポーツナビ)

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