WBCで大番狂わせ狙うオーストラリア 投手力に自信も打線はやや不安

丹羽政善

大事なのは基本に忠実なプレー

2015年にヤクルトに在籍したデニング。オーストラリア代表として3度目のWBCに臨む 【MLB Photos via Getty Images】

 ただ彼は、そうしたこと以上に大切なことがあるという。

「基本に忠実なプレーが出来るかどうか」

 ローランドスミスは、短期決戦だからこそ、そこが大切になると強調する。

「1試合だけの戦いなら、実力差があっても番狂わせが起こる可能性は低くない。でもそのためには、例えば、しっかりカットマンにボールを返すとか、細かい野球をしなければならない。そういうミスが命取りになるから。特に、挑戦する立場のわれわれがミスをすれば、相手につけ込まれる。1次ラウンド、2次ラウンド、決勝ラウンドと勝ち進むにつれて、そのことはより大切となるはずだ。日本はそういう野球がきっちり出来る。だからこそ2度も優勝している」

 図らずも日本の評価になったが、では、同組で対戦する日本の戦力をどう見ているかと聞くと、「まだ、データが揃っていない」とローランドスミスは答えている。

「おそらく、強化試合が行われる大阪へ行く前に分析をして、ミーティングが行われるだろう」

大リーグに劣らない分析力

“分析”という話を聞いて、依然彼が教えてくれたアテネ五輪で日本を下したときのエピソードを思い出した。日本戦の勝因を聞くとローランドスミスは、「ジェフ・ウィリアムスのおかげだ」と日本でも知られる選手の名前を挙げた。

 ウィリアムスは、2003年から09年まで阪神に在籍し、藤川球児、久保田智之とともに「JFK」という最強のリリーフ陣の一角を担ったセットアッパーだが、日本戦の試合前のミーティングやブルペンで、日本の打者の特徴、攻め方を詳細に伝え、各投手がそれを徹底したのだという。

「彼がいなかったら、俺たちは、日本の打線を抑えられたかどうか分からない」

 オーストラリアは今回も、「これまでにはないほどのデータを集めて徹底的に対策を立てて臨む」そうだ。

「大リーグでもデータの分析が進んでいるけど、オーストラリアも同レベルの収集力がある。正直、同組の日本やキューバには、力では劣る。では、どうやったら勝てるか。それには相手を知るしかない。大阪の強化試合で、日本戦を観戦するチャンスがあるのはプラス。そこで分析を始めるのではなく、そこで確認できるようにしたい」

 不利は認める。が、彼らに失うものはない。1試合だけの勝負なら何が起きてもおかしくない――。そう言い聞かせ、彼らは東京で、大番狂わせを目論む。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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