バレンティンら強打者そろうオランダ代表 WBCで目指す“野球フィーバー”

松崎晃平

明らかにパワーアップした今回のチーム

メジャーナンバーワン遊撃手へ登りつめたシモンズ 【Getty Images】

 今回のチームは明らかにパワーアップしている。

 若く粗削りだったキュラソーの選手たちは4年間メジャーの舞台で戦い、確かな成績を残してきた。シモンズはこの4年間で2度ゴールドグラブ賞を獲得。名実ともにメジャーナンバーワンの遊撃手に成長した。また、ザンダー・ボガーツ(レッドソックス)はシルバースラッガー賞を獲得し、ディディ・グレゴリウスはヤンキースの主将デレック・ジーターの後継者を務めている。バレンティンを中心にメジャーの強打者で脇を固めた打線は、大会でも屈指の破壊力になるだろう。

 また、前回大会のウイークポイントだった先発投手陣には韓国・日本で実績を積んだバンデンハークとメジャー通算53勝を挙げているジェイアー・ジャージェンスが加わった。これでオランダ国内の主力投手たちをリリーフに回すことができ、ブルペンを強化できる。

課題を克服した先に待っているのは?

前回大会は過去最高のベスト4。これを上回り、“フィーバー”を起こせるか 【写真:ロイター/アフロ】

 課題を挙げるとすれば、投手層の薄さと外野守備だろう。

 昨秋の日本との強化試合は、ともに序盤リードして逃げ切る体制に入ったが、後半に出てきた投手陣が打ち込まれ逆転された。WBCは球数制限があり、先発が長いイニングをまかなえない。そこで、第2先発を担うであろう国内リーグの投手たちが、いかに我慢して投げることができるかがカギになる。内野陣は鉄壁のメジャー軍団だ。WBC球を生かし、動く球で内野ゴロを打たせ、球数少なくテンポよく投げ込めるかがカギになる。

 もう一つの弱点である外野守備。今回の代表で外野が本職なのはバレンティンとカリアン・サムス(カナダ独立リーグ)、ランドルフ・オデュベル(オランダリーグ)だけ。前者二人はお世辞にも守備がうまいとは言えない。外野の控えに選ばれたのも本職が内野の選手。プレミア12では内野の選手が外野を守り、勝負どころで落球したのが一因で準々決勝のアメリカ戦に敗退。今回の選出ではその反省が生かされていないようだが……。
 
 中心選手のバレンティンも投手層の薄さを自覚し、決して楽な戦いではないことを理解している。ただ、WBCは短期決戦。何が起こるかわからないし、戦力差が試合の中で必ずしも結果として出るわけではない。

 この2つの課題を克服し、日本を撃破した先に、コルデマンスが夢見た“野球フィーバー”に沸くオランダが待っているはずだ。

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著者プロフィール

福岡県生まれ。2009年WBCでオランダがドミニカ共和国を2度撃破したことに衝撃を受け、オランダ野球に傾倒。オランダ野球観戦のためにオランダにホームステイ、一人旅。2015年にはプレミア12観戦のため台湾に2週間近く滞在。ブログ『蘭野球事始』では、オランダ野球に関する記事や選手名鑑を投稿している。

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