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被安打17の侍投手陣が得たもの
結果より個々の状態が最優先

打撃陣はほぼノーサイン

28日の台湾リーグ選抜戦に先発した則本。オフに習得したカットボールを試すなどテーマを持って試合に臨んだ
28日の台湾リーグ選抜戦に先発した則本。オフに習得したカットボールを試すなどテーマを持って試合に臨んだ【写真は共同】

 ヤフオク!ドームのミックスゾーンで選手たちが足を止めてインタビューに応じるなか、先発マスクをかぶった大野奨太は立ち止まることなく、宿舎へと続く地下の長い道のりを、唇を噛み締めながら歩いていった。


 観衆2万2477人のヤフオク!ドームで、2月28日、日本代表壮行試合で侍ジャパンは5対8で台湾リーグ選抜に敗戦。17安打を許して初回から失点を重ねた。3月7日に開幕するワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けた調整試合の位置付けであるとはいえ、大野の表情には悔しさがあふれていた。


 試合後、会見に出席した小久保裕紀監督はこう語っている。


「もちろん勝つに越したことはないですけど、今日までのピッチャーの登板も含めて、あらかじめ決まっているスケジュールをこなしています。打者についても、明日も含めてある程度の打席数を与えようと思っています。(WBCキューバ戦の)7日に向けて、どういうことをすれば(チーム状態が)上がってくるかを最善に考えています」


 攻撃では「つなぐ野球」をすると公言しているが、ここまでは盗塁やバントなど小技のサインをほぼ出さずに、打席で自由に振らせることを最優先している。そうして状態が上向くのを待っているのだ。


 確かに、WBCでの世界一奪還には、個々の選手がどれだけ状態を上げてくるかが最大のポイントになる。そうした過程においては、結果で判断するのではなく、実戦機会から何を得たのかが重要だ。

カットボールの精度試した則本

 宿舎への道のりを歩きながら、大野はこの日の試合を振り返った。


「ピッチャーとのコミュニケーションもありますし、そのなかで抑えていくことが、いまやらなければいけないことだと思います。どの球種が使えるのか、どれが使えないのかを試さないといけない時期でもありますし。ピッチャーを優先に考えて、基本的に、いまの段階では探りながらやっています」


 先発して3イニングを投げた則本昂大は、このオフに取り組んできたカットボールがどれだけ通用するかが大きなテーマだった。24日のブルペンでは「一番良かった」という球種だ。大野はその意図を汲んで多めに使った結果、初回に4安打を許して1点を奪われた。


 この日の投球について、則本はこう振り返っている。


「初回は入りを意識しすぎました。うまく交わしていこうと思って、うまく打たれてしまった。でも、2回は立ち直ることができました」


 本来の則本は交わすようなタイプではなく、むしろ力で押し、フォークやスライダーで打ち取る投手だ。それが打者の手元で変化するカットボールを投げるのは、WBCに対応するためである。


 則本をはじめとする先発投手の意識について、大野が代弁する。


「基本的に球数を減らそうと思っています。遊び球はほとんどないようにしようという考えで、いまはやっています」


 WBCの1次ラウンドでは、65球という球数制限がある。先発はなるべく無駄な球を減らしたいところだ。そうして則本はカットボールを身につけ、台湾リーグ選抜戦では打たれた。


 しかし、3回には甘く入ったスライダーを本塁打されたものの、2回は力で押すスタイルで無失点に抑えている。自分のピッチングをベースにおきつつ、どこまでWBC仕様にするのか。残りの実戦機会でその見極めが求められる。

中島大輔
中島大輔

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた『野球消滅』(新潮新書)。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』がミズノスポーツライター賞の優秀賞。

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