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侍Jの3連覇阻んだプエルトリコ
司令塔モリーナが今回は「最強」と豪語
メジャー屈指の捕手であるモリーナ。WBCではプエルトリコの一員として戦う
メジャー屈指の捕手であるモリーナ。WBCではプエルトリコの一員として戦う【Getty Images】

 1点を返して、なおも8回裏1死一、二塁。ここで日本はダブルスチールを仕掛けたものの、一塁走者の内川聖一(福岡ソフトバンク)が一、二塁間で行き場を失った。


 二塁走者の井端弘和(当時中日)が三塁へ向かって走っているかどうかの確認を怠り、二塁へ向かった内川の痛恨のミス。2点差に迫り、流れは日本にあったが、これで反撃の勢いが失速し、3連覇の道が途絶えた。


 前回のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)を振り返るとき、あの準決勝のワンプレーを避けては通れないが、そのときの相手捕手で、内川を追いつめたプエルトリコのヤディア・モリーナ(カージナルス)はどう見たのか。


 今回のプエルトリコ代表について語ってもらう前に、あのときの記憶をたどってもらった。

あらゆる状況に備えるのが捕手

「あのときのことは、はっきり覚えているよ。試合の行方を決めるプレーになったから」


 フロリダ州ジュピター。いよいよオープン戦が始まるという日の朝、モリーナが取材に応じてくれた。


 では、1点を奪われてなおも1死一、二塁の場面。あそこではまず、何を考えたのか。その問いにモリーナは、まず捕手としての心構えを口にしている。


「まず、捕手というのは、あらゆる状況に備えなければならない」

 

 犠牲バント、ダブルスチール、ヒットエンドラン…。もちろん、多少は絞り込む。


「バッターは確か4番(阿部慎之助)だった。合ってるか?」


 その通り。


「となると、日本がいくらスモールベースボールをするとしても、バントは考えにくい。動くとしたら、ダブルスチール、ヒットエンドランが主な選択肢になる」


 ダブルスチールは頭にあった。が、必ずしも絞りきれなかったという。


「正直に言えば、あそこで日本が何を仕掛けてくるのか、想定が出来なかった。大リーグであれば、打者の傾向、走者のスピードが分かるので、ある程度は、相手が何をしてくるのかイメージが出来る。でも、相手が日本の場合、走者の足が速いのか、バッターのコンタクトが上手いのか、監督がどんな手を打ってくるのか、情報が不足していた。あらゆる状況に備える、というのは、そういう意味でもあったわけだ」

複雑ではなかったあのプレー

第3回WBC準決勝、重盗に失敗しモリーナにタッチされる内川(写真右)
第3回WBC準決勝、重盗に失敗しモリーナにタッチされる内川(写真右)【写真:ロイター/アフロ】

 分からないからこそ、バントでさえ頭に残しておいた。


「可能性としては」


 結局、様々な想定をしていたからこそ、一番、想定しにくいプレーにも対応できたと言えるが、パニックになるようなことでもなかった。


「前に走者がいるわけだから、一塁走者だけがスタートを切ることはない。でも、二塁走者がスタートを切ってなかったから、相手に何かミスがあったのは明らか。こちら側とすれば、一塁走者を二塁に追いつめれば良かったのだから、複雑なプレーではなかった」


 改めてあのプレーの意味を問うと、「試合の流れを決めたといっていいんじゃないかな」と答えて、続けた。


「あの回、むしろ相手に流れがあった。確か、3連打で1点を失ったと思う。まだ、一、二塁で4番。野球の場合、一旦流れが傾くとそれを止めるのは難しいが、その流れをあのプレーで断ち切ることが出来た。試合のカギになった」


 もちろんそれを日本の側から見れば、致命的である。WBCのような大会では、一つのミスが勝敗を分ける。それをまさに、教えてくれるような例となった。

丹羽政善
丹羽政善

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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